目が覚めたらそこはリビングだった。
あれ、私ピアノしてたはず…

寝ていたソファから体を起こすと、ぱさりと床に落ちる毛布。どうやら寝ている間かけられていたものらしい。


「(ここには、あの人が寝ていたはず…)」

きょろきょろと見渡すが、どこにもいない。そのかわり、

「(何かおいしそうなにおい…)」

キッチンの方から物音がする。行ってみると、案の定あの金髪さんがお兄さんキッチンに立っていた。

彼を家にあげたのは私だし、ソファや毛布を貸したのも私だけど、流石に勝手にキッチンを使われては不快に思う。
ぐうぅ…となる腹の虫もこのいらいらの原因だ。

どうやら彼は私に気づいていないようだ。
抜き足差し足で近付く。そーっと、そーっと…
彼の腰と腕の間に顔を入れた。

「う、わ?!」
「うわわわ何これ超うまそー!」
「え?あ、ごめんね、勝手にキッチン借りちゃって」
「熱ッ…うううめえぇぇーっ!」
「フライパンに直接触ったら熱いよそりゃあ!」

フライパンのソースを指ですくい取りぺろりと舐める。
その味に思わず怒りを忘れ、さっきまでの仏頂面が満面の笑みに変わる。
あ、可愛い。素直に俺はそう思った。

※ ※ ※

「ごちそうさまでした」
「はい。美味しかったかい?」
「うん!もーめちゃくちゃ美味し…じゃなくて!!」

バンッ、とテーブルを叩くなまえ。ガチャンと食器が鳴る。

「お兄さん、名前なんていうの?」
「俺?俺はサンジ。よろしくねなまえちゃ…」
「じゃあサンジさん。何でうちの前に捨てられてたの?」
「あ、俺捨てられたんじゃないんだよ」
「え…じゃあ自分からあそこにいたの……」
「あれ、俺引かれてる?ちょっと待ってあの」
「サンジさんそれは人間としてちょっと…」
「待って誤解だ!!」

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