びっくりした。その一言に尽きる。
それからはなまえちゃんの語彙力と話術でなんとかナンパ野郎は立ち去った行った。 最近のナンパはセールス並にしつこいこと実感したぜ…(俺はあんなことしねェけど)
しかし、俺の神経は立ち去っていくナンパ野郎ではなくさっきから掴まれっぱなしの腕に注がれ、頭の中は掴まれたときに彼女に言われた言葉がぐるぐると回っていた。
「ふふん!見たか私の言葉責めの威力!一昨日きやがれ!」 「なまえちゃ…手、手」 「ん。あ、ごめん!」
なまえちゃんの細い腕がパッと離れる。 掴んだ瞬間に比べて大分熱くなった腕と顔を隠すように席につき、アイスコーヒーの入ったコップを口に傾けた。 冷たい感触が喉を流れ、気休め程度だが体温も少し下がったような気がした。
「女好きのくせに、いざってなるとヘタレだよねサンジ君」 「だって、あれはふいうち…っつーか、本当はこんなはずじゃないんだぜ?むしろレディのほうが赤くなるはず」 「まあサンジ君にされたら普通の子ならなるだろうね〜…って、何。近いよ」
ぐっと近づけた顔になまえちゃんの指が伸びる。何をされるかと思ったらでこぴんをかまされた。痛え! ひりひりする額を押さえながらも何とか普通を装う。
「ってことは、なまえちゃんもなってたり?」 「残念でしたー。私は普通じゃないのでなりませーん」 「くっそ…ムカつくけど可愛い…」 「おんやぁ〜?女性に優しいサンジ君がそんな事言っていいのかなぁ?」 「素の俺でいいっつったのはなまえちゃんだろ?」 「お!なってくれるの?」
なまえちゃんの大きなくりっとした目がこちらに向けられる。 強気なその笑顔はもちろん可愛い。 でも、それ以外の表情も見たくなるんだよなぁ…
「なまえちゃんがそうさせてくれるんだろ?」 「ふふん。まあね」 「で、どんなことしてくれるの?」 「え?」
「なまえちゃんは、俺に何をしてくれるのかな?」
ちょっと意地悪してみよう。
「何って…なんだろ」 「なまえちゃんから俺に何かしてくれるんだろ?」 「えっと…それはその…」
なまえちゃんの目が逸らされる。 その目をもう1度こちらに向けようと、彼女の頬に手を伸ばす。頬に触れそうな、そこまでいったときだった。
「あれ、なまえ先輩?」
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