「ホントいいタイミングだね」
「大丈夫か、なまえちゃん。何もされてねェよな?」
「うん。むしろされたのはアッチの方」

後頭部を抑えて机にうずくまる男を見て、スッキリした気分とともに少し同情心が芽生えた。


「ほんとに大丈夫か?触られたりしてねェ?なんならもう1発蹴っとくか?」
「大丈夫だって。サンジ君こそ女の人口説いてきたんじゃないの?」
「してないしてない。あ、なまえちゃんミルクティーでよかったか?」
「うん、ありがとう。はいこれお金ね」
「律儀だなァ。受け取らねえっつっても許してくれねェだろうけど」
「当ったり前じゃん。さ、ゾロ達終わるまで休憩しとこ」
「そうだな。おうお前、用がねェならさっさと帰れ」

痛みで震えていた男…(名前聞いてなかったから面倒だな、ナンパ君でいいや)ナンパ君は、サンジ君にかけられた言葉で顔を上げた。
あーあー、さっきまで余裕かましてたのに涙目になってるよ…


「お、お前!急に現れて何すんだ!それに俺を無視しやがって…」
「あ?何言ってやがんだ。急に現れたのはお前だろ。とっとと失せろ」

そりゃごもっともだ。

「ハイハイ、わかりましたよって素直にどくと思ってんのか?」
「てめえ…」
「あーうぜーうぜー。なあ、なまえっつったよな?なまえ、こいつがお前の友達かよ?」
「いや見るからにっていうか話の流れ的にそうに決まってんじゃん」
「気安くなまえちゃんを呼ぶんじゃねえよ…」
「話ややこしくなるからサンジ君はちょっと黙ってて」

痛みがひいてきたのか、ナンパ君は少しずつ威勢を見せてきた。威勢といっても、普段学校の奴らが見せる威勢とは大分かけ離れたものだけど。
優男の仮面を脱いだナンパ君はもうただのチンピラにしか見えなかった。
まあ、それはサンジ君にもいえることだけど。


「というわけで、私1人じゃないってこと分かってくれました?」
「ああ、分かったよ。でもこいつ、友達のくせにでしゃばりすぎじゃね?彼氏でもねェくせによ」

こいつはほんとに…
学習能力ってもんが備わってない!


「ごめんなさい。さっきの言葉訂正します」

怒りというか、呆れが頂点まで達した私は、大きな溜息を1つつき、隣の彼の腕をぐいっと引っ張った。




「友達改め、彼氏です」

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