映画は2時間ほどで終わった。宇宙戦争がテーマなだけあり、スタッフロールまで壮大だった。いやあ、おもしろかった!

シアターを出ると、まだゾロ達の2番シアターの扉が閉まっているのが見えた。

「宇宙戦争より長い恋愛ってどうなの」
「恋愛は戦争だぜ?なまえちゃん」
「いや意味わからん」

ジュース類は飲まなかった私達は返却係のお姉さんを素通りし、(サンジ君は少し立ち止まったけど)チケット売り場まで戻ってきた。
ゾロ達の映画が終わるまであと30分。私達はチケット売り場の横に設けられた休憩スペースで彼らを待つことにした。


「私ちょっと飲み物買ってくるね」
「ん、じゃあ俺行くよ」
「…サンジ君、そこまで無理にデートぶらなくていいんだよ?」

立ち上がったサンジ君の腕を掴み、売店に向かおうとする彼を阻止する。
いくらこういうのに慣れてるからって、本当のデートをしていない私にそこまで彼がする義理はないから。


「サンジ君、無理してない?」
「…そう見えるかい?」
「うん。サンジ君こういう女の子と出かけるの慣れてるでしょ。何ていうんだろ…慣れてるからこそのよそよそしさがあるっていうか…」
「え、あ、まあ…」

しどろもどろになりながら言葉を詰まらせるサンジ君に思わず笑いが漏れる。
頬杖をつき、その笑いとチケットを挟んだ指をそのまま彼に向けた。



「私といるときくらい気ィ抜いてさ。素のサンジ君でいていいんだよ?」


ぐうぅぅ…

少し格好つけた、そのセリフに情けない音が重なった。



「…………」
「…………」


ぷっ、


「ハハハッ!ちょ、今の…私めっちゃドヤ顔でキメてたのに…ッ!」
「ごめ…今のは…不可抗力っつーか、不意打ちすぎんだろ!ぷ、ハハッ!」

一瞬の張り詰めた空気はもろくも崩れ落ち、私達は同時にふきだした。
しかもそれにツボってしまい、笑いが収まるまで予想以上に時間がかかった。笑いが引いたときはお互い息切れをしていたほどだ。



「はぁー、も…お腹痛い…」
「全く…話、戻すか?」
「いや、いいよ。よく考えたらそういうサンジ君だってサンジ君なわけだし。ああもう何言ってるか自分でもよく分かんないや」

目頭を拭いながら顔を上げると、同じように涙目になった彼の目と合った。
その自然な飾り気の無い笑顔に心臓が1つ、とくんと動いた。

…ん?



「ま、こんなことしてもなまえちゃんがときめかねェのは分かってるけど…」
「え?あ…はは、まあね」

何故だかとっさに慌てて目を逸らしてしまった。
行き場をなくした視線は宙を泳ぎ、中々彼の顔に戻らない。

だが、その視線は自分から合わせるまでもなく、私の顔に回されたサンジ君の手によっていとも簡単に元の場所に戻ってしまった。



「それでも、こういうことしちまうんだよなァ…」
「ん?!」

頭に回された彼の手は、私の頭を自分の方に向け去ると、そのまま髪を手ですくった。
しかし、それだけで彼は何もしない。離そうともしない。
ただ、さっきの私のように、何かためらうように目線が泳いだだけだった。

流石にこの状態は恥ずかしいので離してもらおうと口を開く。
「サンジく…」

が、続きを言う前にその手は私の頬から離れた。


「ま、とりあえず飲み物買ってくるよ」
「う、うん」


「ちょっと待っててね」そういう彼の背中から、今度は目が離せなかった。

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