「さて、私達も入りますか」 「いや、流石にシアターん中までは一緒じゃなくてもいいんじゃないかな」 「え?あ、まあ…そうだけど…」
あわよくば映画を見れるかも…と思った私は、サンジ君の答えに肩を落とす。 まあ、今日は私達は遊びに来たわけではないし、当たり前か。 何だか期待してた自分が恥ずかしくなってきた。
しゅんとうつむいていた顔をふと上げると、隣にサンジ君がいないことに気づいた。
「え…え?!」
慌てて周りを見渡すがどこにも見当たらない。 それどころか次の映画が始まるらしく、次々と人波が押し寄せてきてしまった。
これは…もしかしなくても、迷子フラグ。 さっきまでゾロのことを笑っていたけど、いざ自分のこととなるとこんなにも不安になってしまう。
「情けないなぁ…」
「何が?」
突然頭の上から声が降ってきた。 顔を上げると、きょとんとした顔のサンジ君の顔があった。
「さ、サンジ君…どこいってたの?」 「ん?ああ、これを買いにな」
そう言いピッと指に挟んだ小さい紙を私に見せる。
それは、映画のチケットだった。 それも、ゾロ達が見る恋愛映画では無く、ちょうど私が見たかった洋画のチケット。
「あれ、でもシアターには入らないって…」 「ゾロ達と同じシアターにはね。なまえちゃん、正直恋愛映画苦手だろ?」 「えっ?!う、うん…でも、何で分かったの?」 「デートするならこんくらいは常識だぜ?レディの好みくらい覚えとかねェと、な」
そう言いこちらに向けられるあの優しい笑顔を見た途端、悔しくも安心感がどっと溢れてきた。 こんな浅はかで軽はずみな私にも優しく接してくれるサンジ君は、もしかしたらすごくいい人なんじゃないか…今更ながらそう思えてきた。本当に今更何言ってんだろ私。
「……サンジ君、ありがとね」 「いや、俺もちょうど見たかったから、俺のに付き合うってことにしといて?だからお礼はいいよ」
今のメンタル弱りきった私にそれは…反則すぎる。
「で、映画見る?見ない?」 「……………見る」
私って、子供っぽいのかも。
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