デート改め、単なるお出かけ当日。
待ち合わせの時計台前に一足早く到着していたのは、由香里だった。それから10分ほどたった後、ようやく現れたゾロ。彼を見つけた時の由香里の頬は、まさにバラ色に染まっていた。
「悪ィ。待ったか」 「い、いえ!私が早く来すぎちゃって…」
照れ隠しなのか、ふわふわの長い髪に顔を隠すようにうつむく。 ゾロを見ること、話すことだけで精一杯の由香里なのだが、そんなことにはこれっぽっちも気づいていないゾロは、何やらしきりにベンチの方をチラチラと見ている。
「…?ゾロ先輩、どうしたんですか?」 「あ?!あぁ、何でもねェ。気にすんな」 「はい!えっと、最初は映画でしたよね」 「そ、そうだな…行くか」
※ ※ ※
一方その頃、ゾロが気にしていたベンチの方では──
「おし、待ち合わせ時間はクリアだね。ゾロを2時間前に出発させといてよかった…」 「にしても由香里ちゃん可愛いよなァ。あいつなんかにゃもったいないぜ全く」 「それについては同感せざるを得ない」
なまえとサンジが2人の様子をあたたかく見守っていた。
休日ということで、もちろん2人とも私服でベンチで座っている。 他から見ればごく普通のカップルに見えるのだが、実は全然違うわけで…つまりは他のカップル──ゾロと由香里の見守り役、というわけだ。
「次は映画だな。俺達も移動するか」 「ラジャ。ちなみにこれは私のプロデュースなのです」 「へえ、何で映画にしたんだい?」 「だってゾロ喋るの苦手じゃん。映画なら見てる間ずっと黙ってるから大丈夫」 「なるほどなァ。普段から一緒にいるこっちはうるせェくらいなんだが…」 「一種の人見知りなのかもね」
前を行くゾロ達の10メートルほど後ろをてくてくと歩く。 最初はノリ気では無かったサンジも、何だかんだ言ってちゃんとついてきてくれるところを見ると、案外ゾロの心配をしているのかもしれない。
「何だかはじめてのおつかいのカメラマンさんの気分だよ」 「ちゃんと家に帰れんのかアイツ…」
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