「はぁ……」
思わずため息が漏れる。今私がいるのは教室。 あの罰則も何とか終わり、そろそろ帰ろうと仕度を始めたところだ。
そんな、綺麗に空がオレンジ色に染まっている夕方のことだった。
「あのぅ……なまえ先輩…ですか?」 「え?」
1人の可愛い女の子が私を訪ねてきた。
※ ※ ※
話を聞いてみると、この子は由香里ちゃんと言うらしい。そして、由香里ちゃんはどうやら近々告白をするんだとか。 周りの人がアレなだけに、告白現場はたびたび目撃しているためあまりその言葉に特別な響きは感じないが、やっぱり告白する女の子は応援したくなってしまう。
でも、少々疑問もあった。それは、何故この子は私を訪ねてきたか、っていうこと。そりゃあ先輩にする恋愛相談は参考になるけど、私はこの子と今会ったばかりだ。
色んな疑問があったが、とりあえず聞いてみるのはこれにしよう。
「で、誰に告白するの?」 「えっ……い、いきなりですか」 「由香里ちゃんの恋愛相談もいきなりだったでしょ。ホラ、言った言った」
すると彼女は、白い頬をピンク色に染めて小さい声でこう言った。
「ゾ、ゾロ先輩……です」
なるほど。
「由香里ちゃんは(マリモで鈍感で剣道バカで筋肉バカで顔立ち一見極道みたいな)硬派な男子が好きなんだね」 「はい…」
カッコの中をすごいスピードで心の中で言う。 本当は口に出したいのを全力で堪えた。私は正直者なのだ。 そして、目の前の恋する乙女の理想を簡単に崩してしまうほど腐っちゃいない。
「あの、それでなまえ先輩にお願いがあるんです」 「よしきた任せて!とりあえず何をすればいい?」 「え、えっと…私、1回もゾロ先輩と話したことなくて…」 「じゃあ話す機会を作ればいいんだね。思い切ってデートしてみれば?」 「えっ?!ちょ、待ってください!い…いきなりデートだなんて…」 「大丈夫大丈夫。というか多分いきなりデートくらいの勢いでいかないと(究極に鈍いから)気づいてもらえないよ」
またカッコの中を心の中で唱え、由香里ちゃんにウインクを送る。自慢じゃないけど、私は両目どっちでも綺麗なウインクができる。(ちなみに、これはサンジ君もできるから何かムカつく。)
その時、ガララ…と教室のドアが開いた。噂をすればなんとやら。 入ってきたのはゾロだった。それからサンジ君。
「おいなまえ。仕度できたんなら早く降りてこいよ。おかげでコイツと2人っきりで待たされちまったじゃねェか」 「ふざけんな。ならお前1人で帰りゃあよかったじゃねェか。そしたらなまえちゃんは俺と2人っきりで帰れるのによ」
「ゾロ、デートして」
2人の言い争いの間に入ったのは、由香里ちゃん…ではなく、私の一言だった。
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