コンビニはいつだってお客さんが入ってくる。

それは平日の深夜だって変わらない。夜中、家を抜け出してきたのか中学生だって見かけるし、さっきは70歳は軽くこえたおじいちゃんだってやって来た。──日本人はちょっと病気なんじゃないか…そう思うくらい、コンビニは生活にかかせないものとなっている。

そして、午前1時頃。
ちょっと客足がたえてきたかな…と少しぼぅっとしていたら、また出入口のドアがガーッと開いた。おなじみの音楽が流れる。

「いらっしゃいま…」
「あれ、なまえちゃん?」


『どれだけ変なお客さんがきても、コンビニ店員は笑顔で「いらっしゃいませ」と接客しなければならない』

私は、バイト初日に店長に言われたこの言葉を守れなかった。…多分、今の私の表情は苦汁を飲み込んだような感じだと思う。
すると何故だか分からないが、入ってきた客…サンジ君も私を見てちょっと不機嫌そうに顔をしかめた。


「…メイド喫茶のバイトじゃなかったのか」
「死ね」
「お客さんには笑顔だろ?」

ニッと笑いながら自身を指差すサンジ君。どうやら私がここでバイトしていることは知らなかったようだ。
今だけレジじゃなくて店内の掃除にまわろうかと思ったが、残念なことにサンジ君以外にもお客さんがいるためそれはできない。レジには今私1人しかいないからだ。

彼は、足早に店内の奥の冷蔵庫(コンビニではお馴染みのあの壁にくっついたでっかいやつ)の方へ歩いていった。次に雑誌コーナー。立ち読みもせずに1冊とり、スムーズにレジへ。──急いでるのかな。
レジカウンターの上に商品が出される。私も、お会計をしようと商品を手にとり……


「…お客様。申し訳ありませんが未成年の飲酒は禁じられておりますので」
「俺が飲むんじゃなくてマリモが飲むんだよ」
「どちらにせよ未成年へのお酒の販売は禁じられてますから」
「じゃあタバコだけください。」
「未成年の喫煙禁止」
「いつもは俺が吸ってても何も言わないのに…」
「あれは別。今はお仕事だからダメ」
「店長はいつも売ってくれるんだぜ?」
「店長このやろう!!」

思わず接客言葉が抜けてしまった。…と、今は店長への文句は置いといて。
問題は私の後ろにズラリと並ぶタバコを恨めしそうに見ているコイツだ。


「というわけで、ジャンプだけ会計させていただきます」
「じゃあジャンプもいいよ。立ち読みしていくから」
「ダメ。私が帰って見るから買っておいて」
「はいよ…」

ちゃりーん。
百円玉が3枚カウンターにおかれた。お釣りとレシートを渡し、最後は「ありがとうございました」と笑顔で接客。
心無しか、店に入ってきたときよりもサンジ君の肩が下がっているように見えた。

※ ※ ※

(シャンクス店長!!未成年にお酒とタバコ売っちゃダメって何回言ったら分かるんですか!!)
(そうかたいこと言うなよなまえ。お客さんの要望にできる限りこたえるのがコンビニの役目だ)
(できる限りの境界線超えてます!!)

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -