「あっ!」

なまえちゃんは、「じゃあ、行ってきまーす!」と玄関を飛び出していってしまった。
残されたのは、隣に仏頂面で座っているゾロと机に頭を乗っけてぐっすり眠っているルフィ、そして俺。いつも通りの光景だな…
俺は、机に残ったルフィの皿をキッチンに運ぶため重い腰を上げた。ついでに残った食器も全部洗ってしまうか…


一通り片付けを終え、もう1度りリビングに戻る。
相変わらずルフィは寝てるし、ゾロは宿題を進めているかと期待したが、すでに諦めてテレビをつけていた。誰の家だと思ってんだこいつら。…俺が言えた身分じゃないけど。

「おい、ルフィ起きろ。お前が1番進んでねェぞ」
「お前母ちゃんみてェだな」
「誰が誰の……?」
「な、何で怒ってんだよ…」

コップ片手にテレビ見てる奴に言われると、何だか惨めな気持ちになってくる。特にコイツ。
何とか怒りを抑え込みながら持ってきた毛布をルフィにかける……って俺、無意識でやってるな。

ふぅ。
自然とため息がこぼれた。少し休もうとソファに腰をおろす。
本当は寝転がりたいところだが、ゾロの野郎が半分座ってるからスペースが狭い。


「お前ら本当に同棲してるんだな」
「あ?…何だよ急に」
「いや、何かお前があまりにも普通になまえと生活してるから驚いた」

…言われてみれば、確かにそうだ。
この家の前でダンボールに入っていた時は、まさかこの家の主が可愛い女子高生なんて思ってもみなかった。
あれから色々あったけど、信じられないくらい普通に生活してきた。
同じクラスの高校生男女が同棲なんて、お互い緊張して生活どころじゃなかったり、トラブルだらけなのが普通、なんだろうけど…


「何でだろうな」
「ま、相手がなまえだからなんだろうけどな」
「どういう意味だ?」
「や…察しろよ」
「マリモの考えなんて察せるわけねェだろ」
「てめェ…」

なまえちゃんだから、か…確かにそうかもな。マリモのくせに、結構いいとこついてくるじゃねェか。
少しは尊敬してやろうと思ったが、俺のこの考えは一瞬で崩れ去った。



「なァ、この家酒ないのか?」

こいつは……

「あるわけねェだろ、常識的に考えて!」
「ねェのかよ…じゃあ買ってくるわ」
「あ、じゃあ俺のタバコもついでに買ってきてくれよ」
「何でだよ!」

しばらくキリキリと睨み合う。先に折れた方が負けだ。しかし、どっちも折れるわけが無く…最終的には、やっぱりこれに頼るしかなかった。


「「じゃーんけーん…」」

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