「えーと、豚バラ200gが256円…あ、でも300gだと370円か。うーん…」 「…………買い物って、こっちの買い物のことか…」 「え?」 「いや、何でもないよ。」
200gと300gの豚バラを両手に持ち、真剣に悩んでいる彼女の姿を見て何も言えなくなってしまう。 あー…期待したことが何だか恥ずかしくなってきた。
「コックさん、200gと300gどっちがいい?」 「…200gで。」 「あれ何かサンジ君元気ない?」 「や、元気だよ。すごく元気!」
心配そうに俺の顔を覗き込んでくるなまえちゃんと目があい、思わずバッと顔をそらしてしまった。 って、何で俺がこんな乙女な態度とってんだ!
「なまえちゃん!!」 「?!な、何、サンジ君急に。(うおおおめっちゃびっくりした…)」 「え、あ…その…」
言おうとしていた言葉が出てこない。 というか何を言おうとしていたのかも思い出せない…いや、最初から何を言うかなんて考えていなかったんだ。とっさに…勝手に口が動いてしまったんだ。
「いや、何でもねェ。」 「嘘だ。何か言いたいって顔してる。」 「や、その…なまえちゃん、近い…」 「分かった!」
ぐっと背伸びして俺の身長に届くように近づいていた彼女の顔が離れた。分かった、って…まさか俺の動揺が伝わったのか…?
「豚肉じゃなくて鶏肉がよかったんだね。」
…は?
「それなら早く言ってよ。もうお金払うところだったじゃん。」 「ちょ?!なまえちゃ、違…」 「え?違うの?……言っとくけど、牛肉はうちの家計じゃ届かないからね。」
がま口の財布片手に鋭い目で言う彼女に、俺は頷くしかなかった。
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