ダンボールに入った猫。
そんな100人中100人が捨て猫というだろう、そんな漫画みたいな猫。 実際にそんな猫いるんだろうかと思うところもあるが、実際、そんな猫はいる。 そして、その猫はダンボールの中から切羽詰った大きな泣き声をあげているのだ。 お腹がすいているのか、母親に会いたがっているのか。 ダンボールの中から泣き声が聞こえないときは、その猫は冷たくなっているだろう。
「そんなダンボール見つけちゃいそうな天気だなぁ」
独り言にしては声が大きいが、歩いているのはなまえ1人。 そんななまえに降り注ぐ、鉛色の空からの雨、雨… 右手に傘を持っているため、特に買い物袋を持った左手が雨粒で濡れる。
くしゅん。小さなくしゃみをし、ずびびと鼻水をすする。 はやくバスタオルに会いたい、そんな思いで家まで足を運ぶ。 やっとこさで到着した我が家… その我が家の玄関前、見慣れた茶色の箱が置かれていた。 どっから見てもみなさんおなじみのダンボールだ。 そして、入っているのは毛並みがボロボロの子猫…ではなく、
──片目が隠れた金髪の男子生徒だった。
「あれ、猫じゃない…」
少し残念そうな声を漏らし、なまえはその男子生徒の入ったダンボールの前にしゃがみこんだ。 買い物袋からネギを抜き取り、ベシベシと彼の頭を叩く。 しばらく叩いていると、小さな唸り声をあげて男子生徒は目を覚ました。
「ん…痛ッて……あれ、俺…」 「あ、おはようございまーす。お兄さん大丈夫?」 「えーと……君は?」
かなり寝起きが悪いらしい。 うつろな目付きでそう聞く彼の声は小さくかすれていた。
「私ですか?なまえです…って、お兄さん?」
また寝ちゃったよ…
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