なるほどな… 俺は、校舎側から聞こえる討論の声を聞いて苦笑いをした。音楽室の窓を見ろってのはこのことか。 今だに討論の声は絶えていないが、なまえちゃんはお構いなしに弾き続けている。本当に、自分の世界に入ってるな、あれは… と思ったが、完全にスルーしている訳ではないようだ。なまえちゃんが今弾いている曲は、ナミさん達の言い争いを音にしているようだった。それがおかしくて、思わず笑いが漏れてしまった。
「ったく、いいシュミしてるぜ。」
ポーン。手にしたサッカーボールを高く蹴り上げる。音楽室の窓に届くくらい、高く。 ボールに気づいたなまえちゃんが、ひょこっと窓から顔を出した。
「びっくりしたー。サンジ君サッカー部だったんだ。」 「おう。なまえちゃんは趣味かい?」 「まあね。これが楽しみで学校来てるようなものだから。…あ、サンジ君呼ばれてるよ。」
ほら、と上からなまえちゃんが指を指した方向に目をやる。確かに他の部員が大声で俺の名前を叫んでいた。
「いいよ別に。」 「いやよくないよ。試合始まらないじゃん。」 「なまえちゃんの演奏きいてた方がいい。」 「じゃあサンジ君が試合に戻るまで演奏しない。」
プイとそっぽを向くなまえちゃん。そういう態度が逆にイイんだけど…
「分かった。戻るよ。」 「…試合、勝ってね。」 「おう、任せといて!」
試合中、聞こえた曲はボールが跳ねるような楽しげな曲だった。
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