「お疲れ様」
「ああ、お前か」



片手で流れる汗を拭う貴方に何となく声をかけた。特に用事なんてものはないんだけれど何でかな。不思議な気持ちになったのはほんと。



「どうした」
「何か用がなきゃ声かけちゃだめ?」



一瞬考えてだけどいつもと変わらない声で貴方はさらりと答えてしまう。



「まあいいんじゃねえか」
「うん」



一度上を見上げてワイパーを見た。ついこの間まで命を懸けて戦っていたこの人が私とこんなにのんびりした会話をしてることが何だかとってもおもしろく感じられた。



「ワイパーは恋してるでしょ?」
「大丈夫か、〇〇」
「ワイパーは恋してるよね、戦いに」



本当は恋なんて可愛らしいものじゃないって私も分かってるしもっといい例えがあれば良かったんだけどそれしか出てこなかった。でもその戦いが終わってしまった今だからこそそれを恋と呼べてしまうのかもしれないって思いもあった。



「でもさもう戦いは終わったんだよ」
「ああ、そうだな」



そうだなじゃないよ。戦いは終わったんだから戦いに恋するのはもうやめなよ。そりゃ命を懸けて過ごしていたあの日々に比べると今は暇かもしれない。けど今のこの暇な日々こそが私達が求めていたものなんだよ。慣れるのにはまだ時間がかかるのかな。



「ワイパーはずっとずっと戦いだけに恋してた」
「そうなるな」
「だからさその戦いが終わっちゃったわけだからさ・・・」
「何だよ?」



本当は私に恋しちゃいなよって言おうと思ってたけど、やっぱりやめた。何だか自分から言うのはちょっと悔しいというか負けたような気がしてしまうしあまりにもそれははばかられた。



「違うものに恋してみるのもいいんじゃない?」



あえて私にとは言わないけれど何だか今のワイパーには届く気がしたりしなかったり。我ながら回りくどい言い方をしたと思う。



「違うものか」
「そう、違うもの」
「お前、とかな」



顔色を変えずにやっぱりいつもの調子で貴方は言った。戦いを愛した貴方へどうかこれからは私に愛をください。










10/10/26(20170119).

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