ジャブラの部屋は嫌いじゃない。1番自由な感じがするから。任務であちらこちらへ行ってる私達だけど結局自由は無いのも同じだから。とにかくこの部屋が嫌いじゃない。だから私はいつもいつもジャブラの部屋に長居してしまう。だけどその長居している理由が最初の頃のそれとは変わってしまっている今の私が居るわけで。まさかこんなおじさんと一緒に居たいからだなんてまさかそんな。



「おい」
「ん?」
「お前いつまでここに居るんだよ」
「そんなの今更聞くの?」
「まあそうだな」


そして沈黙。だけど私にとって沈黙は別に嫌なことではない。その無音がそれでもお互いを繋げてるんじゃないかとか思うと何だか今まで過ごしてきた日々が無意味じゃない気がする。



「なら、〇〇」
「ん?」
「いつまでおれを見てんだよ?」
「え?」
「だからさっきからおれのこと見すぎだ狼牙」
「そう?」



見てるけどね確かに私はジャブラを見てるけど。別にそんなに意識するほどのことでもないしそれもまた今更過ぎやしませんかジャブラさん。



「あんまこっち見んなよ」
「嫌?」
「嫌とか、ういうことじゃねェだ狼牙」
「分かった」



体ごと反対側を向いて、ジャブラに背中だけを見せてみる。ジャブラが今私の背中を見ているのか見ていないのかは分からないけど後ろにジャブラが居る。いつもと逆のその状態が何だかくすぐったくて落ち着かない。



「ねえジャブラ」
「何だ」
「ジャブラってあんまり狼っぽくないよね」
「そうか」
「うん」



また会話が途切れた。草を踏む音がして彼がすぐ後ろまで近付いて来ているのだと分かる。心臓がどきどきして何だか体も少しだけ熱くなってきたような気がして。こんなの全然私らしくない。



「〇〇」
「ん?」
「こっち向けよ」
「何で」
「いいから」



肩を乱暴に引かれて痛い!と振り向けば思いの外顔が近くにあったから少しだけ驚いた。初めてこんな近くでおじさんの顔見たな。



「見るなって言ったり見ろって言ったり何?」
「お前の全部が欲しいからわざと言ってんだ狼牙」
「そ、うなんだ」
「1つ教えといてやる」
「何?」
「狼ってのはな欲深い生き物なんだよ」



ならばいっそ私のすべてを奪ってくれたらいいのに。










10/10/07(20170116).

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