「俺は、お前を守れるくらいに強くなりてぇ」
「エースは充分強いよ」
「いや、まだまだだ」
月に照らされたエースの顔は、いつもより男っぽくて、大人っぽく見えた。それと、エースとルフィはやっぱり違うんだなって思った。違うから、エースはやっぱり強いし、ルフィはやっぱりエースに勝てないんだなって。
「強くなりてぇ」
「うん」
「お前の為に」
「…うん」
たぶん、エースはもうすぐ海に出るんだろう。私には言ってくれないけど、私には分かる。サボの思いを背負って、自分の夢を叶える為に。きっと海に出るだろう。
「きれいだね、月」
「ん、ああ」
きれいだね、エース。
「遠いね、月」
「そうだな」
遠いね、エース。
「大きいね、月」
大きいね、エース。エース、エース、エース。
「何で…何で、泣くんだよ?」
「わかん、ないっ」
「な、くなよ」
迷い迷い、エースの手がぎこちなく背中をさすった。あったかい、大きい、優しい、遠い。
「ルフィのことは、私とダダンさんに任せて」
「〇〇、お前」
「大丈夫、ちゃんと面倒見るから」
「心配だな、お前ルフィより小せぇし、弱ぇし、すぐ泣くし」
「だったら!…だったら、どこにも行かないでよ」
「…悪ぃな」
「謝らなくて、いいよ」
いいから、どこにも行かないで。
(今の貴方に伝えたかった、まずは自分を守れるくらいに強くなってと)
2011/10/15.