何となく、床に落ちていた本を拾ったら懐かしいものを見つけた。
小さな赤いバラのピアス。
そういや、あいつはピアスがよく似合うやつだった。会うたびに少しずつ増えていくその数を、なぜか心配したりもしていた。
顔ばっかりは可愛いくせに、何でか男物のピアスしかつけようとしないあいつを不思議に思ったりもしていた。
「何でもっと女っぽいのつけねーんだよ?」
「女っぽいのって?」
「花とか、色々あるだろ」
「無理、やだ、しゃらくさい」
年頃の女が言うことかよと、少し呆れながらも、俺はこいつのそういうところが好きだった。
「パウリー、これ、」
「やるよ、1人身のお前に優しい俺からのクリスマスプレ」
「ありがと、パウリー大好き!一生大切にする!」
あいつの喜ぶ顔が好きだった。普段は男勝りなくせに、こういう時ばっかりは女になる、それが好きだった。
「一生大切にするんじゃなかったのかよ、あほが」
2人で撮った写真だとか、お前の好きだったマグカップだとかまで持ってけとは言わねえけどよ、これだけは持ってってくれてもいいだろ。
俺がお前にやった、最初で最後のものなんだから。
よっぽど握りつぶしてしまおうかと思ったそれを、よっぽどゴミ箱にでも捨ててやろうかと思ったそれを、ただ、どうすることも出来ずに握りしめた。
あいつと同じ数だけ、穴をあけたら、あいつの気持ちを少しでも分かってやれるんだろうか。
あいつもまた、誰かをそう思って穴をあけていたんだろうか。
もしも、また会うことがあったら、いや、ありもしねえもしもを考えるのはやめておこう。
さあ、今日も仕事だ。みんなが待ってる。
(もう1つの小さいそれは、今も君の耳元で揺れているのだろうか)
2012/12/28.