「〇〇さん、怪我してるじゃないですか!」
「ああイヅル、大丈夫大丈夫!それよりイヅルは怪我無い?」
「御自分の心配をしてください・・・」
「ごめんね、心配かけちゃって」



僕達新入隊士と〇〇さんで虚の討伐に向かった。〇〇さん1人ならこんなミスは犯さなかった筈だ。僕のせいだ、僕の足が止まってしまったせいだ。僕のせいで、〇〇さんに怪我をさせてしまった。



「もしかして自分のせいだと思ってる?」
「はい・・・本当にすみません」
「馬鹿、初めての任務なんだから完璧に出来るわけないでしょ?私だって初めての時は怖かったんだから」
「そうなんですか?」
「うん、あー私ここで死んでもおかしくないんだなーって思ったらね・・・怖くなった」



〇〇さんは小さく笑って見せた。この人でも、そんなことを考えたことがあったのかと思うと何だか不思議に感じた。



「それより、手当しましょう」
「じゃあ頼もうかな」
「失礼します」



死覇装の袖を肩までめくりあげて、傷口を見る。深く裂けてはいるけれど、致命傷じゃなくて良かった。とりあえず止血をしなければ。



「本当にすみません」
「ねえイヅル」
「はい」
「私は、ありがとうって言ってほしいかな」
「え?」
「ごめんも大事だけど、同じくらいありがとうって伝えるのも大事なんだよ?」
「・・・ありがとうございます」
「うん」



柔らかく笑ってそう諭す〇〇さんは本当に眩しく見えた。僕にとってこの人は眩しすぎる。こんな状況なのに、この人への憧れが膨らむのを止められなくなってしまいそうだった。



「今度、お酒でも奢らせてください」
「何で?」
「この怪我へのお詫びと感謝です」



正直そんなの口実に過ぎなかった。〇〇さんを誘う愚かな口実に。もしかすると、それすらもこの人は見透かしているのかもしれないなんて思いつつ、口から出てしまった。



「気持ちは嬉しいけど、私にお酒奢るよりもさ・・・次誰かが困ってた時に助けてあげてほしいかな」
「え?」
「それが私にとって謝罪と感謝になるからさ」
「・・・はい」



やっぱりこの人は眩しい、そして僕は愚かだ。素晴らしい人だと思わせられる反面、断られたことを悲しく思っている自分も居るのだから本当に僕は救いようがない。こんな時に、こんな場所でそんなことばかり考えてしまっている僕はなんて。なんて愚かなんだろう。



「でもイヅルから誘ってくれたの初めてだね」
「え?」
「だから私の奢りで飲みに行こ?」
「で、でも」
「かっこつけさせなさいよ?副隊長なんだから!」
「・・・はい!」



僕はなんて単純なんだろう。この人の一言一句、一挙手一投足に文字通り喜怒哀楽することに忙しい。なんて、単純で浅ましいんだろう。そうはなりたくないのに、冷静でいたいのに。この人と一緒に居ると僕の愚かさに歯止めが利かなくなってしまうようだ。でも、それでも。今この瞬間とても気分がいいという現実にはどうやったって抗いようがなかった。

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