1週間後、俺はまたあそこに向かっとった。死神が壊してしもたあいつの仲間の墓に花でも手向けたろ思たんと、あそこに行けばまたあいつに会えるかもしれへんと思たからや。



「ほんま、うちのもんが済まんかったの」
「また来たのか?」
「詫び入れに来たんじゃ、それぐらいええやろ?」
「この花、お前が持ってきてくれたのか?」
「ご想像にお任せします」
「ありがとう」



ああ、俺はやっぱりこの顔が見たかったんや。ここに来ればまた見れると思った、それは間違いやなかった。



「俺は平子真子や」
「ひらこ?」
「真子でええよ、お前の名前は?」
「△△〇〇」
「〇〇でええか?」
「うん」



最初はやっぱり少し警戒されとったけど、何回か会いに行くうちにすぐに普通に話してくれるようになった。〇〇は食い物を盗んで皆に分け与えとること、俺に似た喋り方をする仲間が居ること、今まで誰にも負けたことなんてなかったこと。色んなことを話してくれた。俺も色んなことを教えた。五番隊の隊長をやっとること、〇〇より小さいクソ生意気なガキ(ひより)が居ること、どんな仕事をしとるかということ。〇〇は全部の話を夢中になって聞いとった。今まで全く知らへんかっことばっかりで面白かったんやろな。



「隊長って何するんだ?」
「〇〇と同じや、皆を守っとるんや」
「そうか、真子も大変なんだな」
「そんなことあらへん、〇〇の方がよっぽど大変や」
「私は楽しい、皆を守って皆が笑っててくれればそれで良いんだ」
「そうか」
「でも、時々思うんだ」
「何や?」
「私を守ってくれるのは誰なんだろうって」



言葉が出えへんかった。やっぱしこいつも普通の女なんやな。環境が、生活がこいつをこないにしてしもただけで、根っこのとこは弱い普通の女や。



「居らへんのか、お前より強い奴」
「今のところ真子だけだ」
「そうか、なら俺が守ったるわ」
「真子が?」
「せや、俺がお前を守ったる」
「真子が、私を?」



大きな目を更に見開いて何度も聞いてきた。これも、初めて言われたんやろな。いちいち反応がでかいとこもおもろいな。



「私は真子に何をしてあげられる?」
「せやなぁ、近くに居ってくれたらええやろなー」
「そうか、なら私は死神になる」
「それ、ほんまに言うてんのか?」
「うん、真子の近くに居たいんだ」



俺はあの時少しだけ後悔したねんで。お前があんまりにもすぐ俺の言葉を受け入れてそんなこと言うもんやから。仲間からお前を奪ってしもたこと、お前を無責任に死神にならせてしもたこと。でもな、お前に出会えたことはこれっぽっちも後悔してへんしお前にもしてほしくないんや。これは俺の我儘やな。



「こんなに誰かの近くに居たいと思ったのは初めてだ」
「俺もや」



〇〇はあれからすぐに霊術院に入学した。通っとる間はほとんど会えへんかったけど、〇〇が卒業してその理由が分かった。〇〇はたったの2年で霊術院を卒業してきよったんや。入学試験は斬術白打以外はギリギリ通ったレベルやって聞いとったからほんま驚いたで。めちゃくちゃ努力してくれたんやろな。俺はそれがどうしようもなく嬉しかった。



「久しぶりやな」
「やっとここまで来れたよ」



そう言うて笑ったその顔はあの日と何も変わりなかった。変わったところと言えば、ガリガリやった体が少しは女らしい体つきになったことと髪が伸びたことと、言葉遣いがマシになったこと。そして斬術も白打も鬼道も歩法も霊術院トップの成績まで伸びてたことやな。



「これからよろしくな、〇〇三席」
「よろしくお願いします、平子隊長」

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