「それほんまか?」



話半分で聞いとった惣右介の話があんまり非現実的なもんやからつい聞き返してしまった。せやかてそんなこと、有り得へんやろ。



「本当らしいんですよ、相手はたった1人の子供だって」



惣右介の話をまとめるとこうや。最近流魂街の方で死神が襲われる事件が多発しとる。調査部隊までボロボロになって帰ってきよった、ここまでは俺も知っとる。けど、その事件の犯人がたった1人のしかもガキや言うことが襲われた隊士等の証言で分かった。これが惣右介の話や。



「そらまたどえらいガキが居ったもんやな」
「信じ難いですね、霊術院生ならまだしも流魂街の子供がそんなこと」
「そのガキも信じられへんけど、ガキにボロクソにされとるうちの方も心配になるわ」
「それもそうですね」



まあ何にせよ、平隊士や席官じゃあもう手に負えんらしいから俺が行くしかないやろ。はじめに襲われたんわうちのもんやからな、必然的に管轄もうちになるわ。



「ほな、隊長様直々に行ったるかいのぉ」
「くれぐれも気を抜かないでください」
「わーっとるわ!」



一言余計な惣右介を黙らせて流魂街へと向かった。しっかしほんま情けないわ、ガキ1人とっ捕まえられへん護廷隊が。ぶつぶつ文句たれながら歩いとると、少し開けたとこに出た。確かここら辺で襲われたっちゅー話しやったな。しかしまあ、やっぱり数字がでかなると暮らしも酷いもんやのぉ。



「居んねやろ?霊圧ばんばん出とるでー」



だいぶ手前から感じとった霊圧はやっぱりそのガキから出とると思って間違いないやろな。事件が起きとるとこに近づくにつれてどんどんでかくなりよる。ガキがこないなもん持ってんのかいな、ほんまどえらいでこれは。



「やっと出てきたんか、お前何もんや?」



木の上に現れたのは頭に布巻いて、鬼の面をかぶったガリガリのガキやった。俺の質問に答えるより先にその踵が落ちてきた。



「いきなしそれが挨拶かいな?」



拳と蹴りの往復は俺には届かへん。でもまあ隠密機動まではいかへんけど、素人でこれはなかなかやな。



「白打の才能あるで自分」



それが駄目だと分かると今度は木刀が降ってきよった。こいつアホか。俺らは斬魄刀持ってんねんぞ、それ相手に木刀て。しかもその木刀で勝ってしまうなんて。ほんまなんちゅーガキや。



「斬術も出来んねんな、せやけどそんなもんじゃ俺には勝てへんど」



木刀を叩き落とされて簡単に押さえつけられたもんやから、驚いてんねやろなこいつ。今回は相手が悪かったんや、済まんな。



「何で死神を襲ったりしたんや?」
「死神が悪い」



声を聞いてまさか。布と面を取ってみて初めて分かった、女やった。まさか、これはほんまに予想外や。ガリガリには違いないけど、中身がこんなべっぴんさんやったとはなぁ。



「死神が、何かしたんか?」
「あれを、壊した」
「あれって・・・」
「死んだ仲間の墓だ」



こいつの目線を辿るとそこには荒らされた墓らしきもんが見える。そうか、これはお前なりの守り方やったんやな。お前なりの理由ある戦いやったんやな。



「うちのもんが、済まんかった」
「謝ってくれるのか?」
「当たり前や、今のは誰が聞いてもこっちが悪いやろ」
「ありがとう・・・お前みたいな死神も居るんだな」



小さく笑ったその顔は、どこにでもいる年頃の女の顔やった。こいつもほんまやったら恋の1つや2つ、男の10人や20人をたぶらかしとる普通の女の子やったんやろな。それが許されへんところで、生きてきたんやろな。



「俺からももうここには近づくな言うとく、荒らすなともな」
「・・・いいのか?」
「ええも悪いもここはお前らが住んどる場所や、部外者は俺等の方やろ」
「ありがとう」
「礼言われるようなことしてへんわ」
「でも、ありがとう」



走って帰ってく後ろ姿をずっと見送った。名前も聞かれへんかったな。隊舎に戻ってぼんやり考える。惣右介には見つけられへんかったって言うといた。元々捕まえたとしてもそないに大事にする気も無かったし、別にええやろ。幸いこっちにも死人が出たわけでもない。ただ、どうしてやろな。あいつの笑った顔が、頭から離れへんのや。

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