(エレンside)



あいつら同期に会ったあの日から、5日程経った。訓練が忙しくて、あの日からほとんどあいつらにも会えてねぇし〇〇さんと話す機会も結局ほとんどないままだった。



「あの、今日は〇〇さんは居ないんですか?」



そう言えば今日は朝から一度も見かけていないことに気づいて誰にというわけでもなく尋ねてみた。昨日の夜には居たから、朝早くどこかに行ったのか?



「〇〇なら兵長と出掛けたよ」
「リヴァイ兵長と?任務か何ですか?」
「多分エルヴィン団長の所に行ったんじゃないかな?〇〇は明日非番の筈だから、その後は帰ってくるか分からないけど」
「そう、ですか」



あの人がリヴァイ兵長と一緒に居ることが多いのは知ってる。それはあの人が優秀であり、目をかけられているからなんだろう。他の先輩方とはまた違った扱いを受けているのを知るたびに、遠い存在になってしまったと強く感じる。



「もしかして〇〇がリヴァイ兵長と居るのが嫌なの?」
「え!?いや、そんなことは・・・ただ・・・」
「ただ?」
「あの人の凄さを知るたびに、遠いなって思って・・・」
「〇〇が遠くに行っちゃう気がして、寂しい?」
「そう、なのかもしれないですね」



5年前までは手を伸ばせば届く場所に居たはずのあの人が、今はどうしようもなく遠い。それが寂しいのかどうかはよく分からねぇけど、もちろんいい気分ではないのは本当だ。だってあの人が遠くに行けば行くほど、俺達はまた守られるだけになっちまうじゃねぇか。



「私もね、〇〇を見てると時々寂しくなるよ」
「ペトラさんが、ですか?」
「〇〇とは歳もそんなに変わらないし、入団した時からずっと一緒だったからね・・・」
「そうだったんですか」



ペトラさんと〇〇さんが今までどういう風に過ごしてきたのかは知らない。けれどお互いに調査兵になってそれからずっと生き残ってる数少ない仲間の1人には違いない。自然と相手を思う気持ちは強くなっていくんだろう。




「リヴァイ兵長って人一倍〇〇にあたりが強いところがあってね、あれって裏返しの気持ちが強いってことなんだと思うんだよね・・・」
「裏返しの気持ち?」
「リヴァイ兵長はきっと〇〇を誰よりも評価していて、可愛がってるんだと思うよ!あの人なりに、ではあるけどね」
「・・・ペトラさんはよく見てるんですね、リヴァイ兵長のこと」
「リヴァイ兵長は皆の憧れだからね・・・こんなに近くで働けることなんてそうそうないから、どうしても目で追っちゃうよ」



ペトラさんは、兵長のことを心底尊敬してるんだ。それは俺にでも簡単に分かった。リヴァイ兵長を思ってそんなに優しい顔になれるのは、きっとよっぽど兵長のことを・・・。



「でも兵長の隣にはいつも必ず〇〇が居る・・・時々思うの、兵長の隣に居られるのが私だったらな・・・なんてね」
「・・・何となく、その気持ち分かる気がします」
「そっか・・・さ、兵長が帰ってくるまでに綺麗にしとかないとまた怒られちゃうよ!」
「はい!」



ペトラさんはまた大きく笑って枯葉を集め始めた。その足元に真ん中からぽっきり折れた白い花を見つけて、何となくあの人に似ていると思った。俺は、あの人の為に何が出来るんだろう。

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