何年か前に、親の使いでファブレ家に行く用事があった。その時、ルークに会って、ガイに会った。
親にはルークと仲良くしろと言われたけれど、私の心は完全にガイに傾いた。


「おう、〇〇じゃねえか」
「久しぶり、ルーク」
「3ヶ月振りくらいか?」


公爵の子息なのに、くだけた物言いをするルークは嫌いじゃない。
一緒に居ると、すごく楽。


「今日はどうしたんだよ?」
「ルークのお父様に手紙を届けに来たのと、ルークの顔を見に来た…って言ったら嬉しい?」
「ばっか、お前!」


会う度言っている私の冗談1つ1つにいちいち赤くなって怒るルークは子供みたいですごく可愛い。
だけど、そんなルークを笑って見ていながら、頭の中にはルークじゃない、彼が居る。


「楽しそうな声が聞こえると思ったら、ルーク様に〇〇様じゃありませんか」


わざとらしくおどけた口調で声をかけてきたのはさっきまで頭の中に思い浮かべていた、彼。


「ガイ、ルーク様なんて気色悪ぃっつーの」
「これはこれは失礼致しましたルーク、様」


ガイの冗談にまで怒るルークを見て、また笑いが止まらなくなる。
本当、ここに居ると全然たいくつしない。


「君を楽しませることが出来て光栄だよ」
「こちらこそ」


目尻に溜まった涙をさっと拭って、ガイを見上げる。
今日も今日とてかっこいい。安い言葉かもしれないけど、本当に素敵。今まで会ったどんな貴族よりも、何倍も素敵。


「俺の顔に何か?」
「ううん、ただ、久しぶりだなって思って」
「たった数ヶ月なのに、女性は見違える程変わってしまうね」
「綺麗になりたいと思わせてくれる人が居るからじゃない?」


それはもちろん、目の前に居る貴方。
私が笑ってみせれば少し困ったように笑うところもまた素敵。


「いい人でも居るのかい?」
「それなりにね」
「君が好きになるくらいだから、素敵な人なんだろうね」
「ええ、もちろん」


今の私にとって、世界で1番素敵な人。
きっとオールドラント全土を探したって他には居ない。


「綺麗な金髪で、碧い碧い目を持っていて、とても紳士的だけど、どこか子供みたいな人」
「紳士的ってところ以外は何だか俺みたいだな」
「ええ、そっくりでしょ?」


もしかしたら、ガイには分かったのかもしれない。分からなかったのかもしれない。
でも、そんなことはどうでもよかった。


「だけどね、絶対にこの想いは届かないの」


私と貴方じゃ、何もかもが違い過ぎる。


「だから、私はこの想いを殺して土の中まで持っていくわ」
「辛くは、ないのかい?」
「辛くなんかないわ、だって…」


強がった自分を一瞬怨んだ。だけど、すぐに屁理屈が浮かんだ。


「だって、私は死ぬまでその人に恋をすることができるじゃない?」


出来ることなら、本当にこの想いを殺してほしかった。
他の誰でもない、貴方に。










10/08/10.

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