†理由はそう、貴方に似た花だから / 紅勾
我らが主が紅の蓮と、光のこどもが夕焼け色と例えるならば。
――私はあれを、彼岸花と例えよう。
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彼岸の時期に綻ぶ燃えるような真っ赤な花弁。墓所に咲き根に毒を持ちながら、しかし大切な物を守るという意味がある花。見た目などから不吉と言われるも、飢餓の時には薬となり食糧となり、梵語では「天上に咲く小さな赤い花」という意味がある花。
……そして、その花言葉に「哀しい思い出」という言葉がある花。
名を、彼岸花という。
人界に咲くこの花を知った時、私は真っ先にお前のような花だな、と思ったよ。
燃えるように真っ赤なその髪。十二神将最強にして最凶の力を持ち、護るということを覚えたお前。
その力から畏怖の対象とされ、しかし闘いの時には最も大きな戦力となる。その昔孤立していたその姿は、さながら天に咲く孤高の赤い花の如く。
……そして、「哀しい過去」を抱え生きているお前。
名を、紅の蓮という。
ほら、そっくりだろう?
そう言ったら、お前は苦笑していたな。――確かにそっくりだ、と。
だがお前は、もうひとつのこの花の花言葉や、勝手に私がそれに抱いた感情までは知らないだろうから。
でも、知らないからこそ、私は敢えてお前にこの花を手向けようと思う。
表向きには似ている花と。でも裏側には――。
貴方に似ていると思ったから、不吉な花でさえ愛しく感じるのです
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『気づかなくていいと思うから、こんなことをするのはやはりどこかおかしいのだけれど。
それでも私はこの花を贈るよ。
《――想うのはあなたひとり》
こんな言葉を、ひそかに込めながら』