08


試着室でイケメンくんに選んでもらった服をぎこちなく試着したものの、いざ人前に立つ事に対し、緊張と不安でいっぱいいっぱいになっていた時「舞さん、着られた?」とカーテン越しから声がし、思わず返事をしてしまったものだからさあ困った。

どうしよう…
本当にどうしよう……
服はとても素敵なのに、着てる人間がこんなのだから…

と、またマイナス思考になってしまって俯いていると、カーテンがシャッと開いた。目の前には痺れを切らせて不機嫌な表情の雪。
おいおいおい!もし着替え途中だったらどうするつもりだったんだ!

『ちょっと!急に開けないでよ!』
「うっさいな、舞がちんたらしてるからだろ。いい加減腹くくれよ」
「あ、舞さんやっぱり似合う。可愛い。」
『ち、ちょっと!2人とも!!遼くんに至ってはセクハラに近い…!』
2人して私の制御を無視し、少し広めの更衣室に入ってきた。
「舞さん、やっと俺の名前呼んでくれた。」
『名前は咄嗟に…、って!そういう事じゃなくって!!』
「煩いな、舞が遅いからだろ。それよりいいじゃん、似合うよその服。やっぱり遼の見立ては正解だったな!」
「当たり前じゃん、俺だよ?」
『そんな事より……』
「「ん?」」

『2人とも早く出てけーーー!!!!』








「ありがとうございましたー」

店員さんの爽やかな笑顔に見送られ、先程試着した服を手に持ち少しやつれた顔をして店を出た。
あれから雪は雪で、自分が物色していた服を買い、遼くん(成り行きだが名前呼びが出来るようになる)は用事があるようで昼前に近くのパスタ屋で集合となった。

『…たく、雪は分かるけど、遼くんまであんなんだったとは…』
「ごめんごめん。遼に関しては日頃見慣れてるから…」
『見慣れてるの!?どういうこと!?』
「あ、違う違う。あいつ下着メーカーにも片足入れてるから」
『そういう問題じゃ無い!ああ、もう……なんか一気にイメージが…』
「だから言ったじゃん、顔だけだって。でも、あいつは優しいよ。本当に。…昔っからさ」
『…雪?』
少し言葉を濁す雪。何処か寂しそうだった。
でも、すぐにいつもの調子で「下着姿だったら私はすぐ更衣室から離れて2人きりにさせたんだけどな〜」と恐ろしい事を言ったものだから前言撤回。


それから少し本屋で時間を潰し、欲しかった漫画を何冊か買い込めば通路に設置してあるベンチに雪と座りながら漫画を読んで過ごした。
前言撤回はしたものの、先程の雪の言葉と表情が気になってしょうがなかった。
普段あまりああいう顔を見せない彼女だ。何かあるのかと思っていた。でも、他人に対して踏み込む事が苦手な為、なんて声をかければいいのか分からないため悶々としていた。
どうしてこういう時何も言えないんだろう。でも、もし相手が放っておいて欲しい事だったら大きなお世話になるし…
そんな事ばかり考えてしまってこの時読んだ漫画の内容は殆ど頭に入ってこなかった。



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