03


いやいやいや、無いでしょ
ミシェルくん命の私が生身のましてやイケメンにきゅんっておかしいでしょ。
無い無い無い無い無い無い!


でも、
『…かっこいい』
小さく呟いた声は幸いにも誰にも気付かれず、声に出してしまったことに恥ずかしさを覚え慌てて裏へ行き顔を水道で濡らした。

きっと寝不足だから変な感情になっているんだ。
きっとそうに違いない。
山本さんに「どうしたの!?」ってびしょびしょの私の顔を見て心配されたけど、大丈夫です!と応え何食わぬ顔をしてレジに戻った。


その後は夕方に来店する学生や夕飯を買いに来る主婦層で店内が賑やかになりいつの間にかイケメンくんは帰っていた。
そういえば昨日おっちゃんが言ってたイケメンくんはさっきのイケメンくんと同一人物だろうか。
……まあ、どっちでもいい。
現実に戻れ私よ。



「橘さん、お疲れ様!」
『あ、お疲れ様です!そっか、今日は21時までだった』
「明日昼間だからね、ごめんね、時間安定しなくて。」
『いえ、大丈夫です。』
お疲れ様でしたーとお酒を何本か買い家までの道を好きなアニソンを聴きながら歩いて帰る。
勤務時間のこと、店長一応気にしてたんだ…
厳しい時はあるけれど、結構ホワイトな場所だと思う。…慣れればだけど。


んんー、と伸びをしながら河川敷を歩く。
此処に来るのは久しぶりだ。
OLしていた時代は、上司の鬱憤を晴らすために誰も居ない此処に来ては大声で文句をぶちまけていた。今日は、あの謎のどきどきを無くすため。

芝生に腰を下ろせば先程買ったお酒を手に取りぐびぐびと飲む。勤労後の酒は1番美味しい。

今日は満月。
雲も無く、空は満天の星。
『……綺麗』

綺麗なものを見ると自分が醜く感じる。
見た目も心も醜いと。
だから自然と一線を引いていた。
近くにいると、情けなくて、泣けてくる。

可愛くなろうと努力はしてみた。
でもセンスが本当に無くて、いつも空回り。
街中で見掛けるキラキラとお洒落な女の子達が陽なら私は陰だ。
今日の彼だって、陽な彼女達しかきっと目に映らないだろう。


『……忘れよ』
ぐびっと最初の一缶を空けると次に手を伸ばした。それと同時に後ろに気配がした為、ビクッと後ろを振り向いた。


「あ、すみません。」
『…………っ』
なんでなんでなんでなんで!?

どうして!?


「いつも誰も居ないので…」




君が居るの?







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -