01


それはもう一目惚れだった。
見つけた前までは所謂オタク女子。
男友達も居たけど、みんなオタクだった為“情報を共有する仲間”という認識しかなかった。

それに見た目も私はダサい。
眼鏡だし服はいつも近所の安いファッションセンターなかまる。なかまるが悪いって事ではないけれど、駅ビルのお洒落な服屋で買う勇気が無い。センスが無いのにそんな所で服を買ってみろ。指さされてゲラゲラ笑われるのがオチだ。


そんな私に、微笑みの天使が舞い降りた



(それでも恋をする)


「いらっしゃいませー」
私の働いてるコンビニは接客の声出しに力を入れてる所で、とにかく運動部のように声を出さなければ店長に怒られる。
また、掃除も綺麗に素早く、品揃えもしっかりと。という徹底ぶり。
そのため、若い子達は入ってもすぐに辞めてしまい20代で昼も夜もバリバリ働けるような彼氏も居なければ実家にも居ない私はガッツリシフトに入れられるのだ。

前はちゃんとOLとして働いていた。
でも元々人付き合いがいい方ではなかった為、周りから人格を誤解され、同僚との距離が広がり居場所を無くし、最終的に上司からのパワハラで体調を崩して辞職。
辞職しても一人暮らしをしていた為お金の工面をしなくてはならない現実を突きつけられ、仕方なくアパートから歩いて10分のところにあるコンビニで働き始めたのだ。
幸いにも人間関係はドロドロしておらず、日中に入ってもパートのおばちゃん(田中さん)は明るく優しい人で入った当初は分からないところを事細かく教えてくれるベテランさん。
夜は夜で、店長と一緒になる事が多いのだが、基本的な仕事をこなして居れば怒られない。学生の頃バスケ部だった私は(この時に人間関係を築く事を諦めた)声出し等は慣れっこですぐに店長との信頼関係も築けた。
なんだ、私、意外にも接客向いてるじゃん。と、人見知りだし人付き合い悪いけど、オンオフが実は出来るやつなのだと最近気付いてきた。


「舞ちゃん、いつもの頂戴」
今日の勤務は夜勤。
この時間は殆ど常連か近くの大学の学生達しかこないので大体の客の顔は覚えている。
因みにこの40代のおっちゃん(おっちゃんで良いと本人に言われた)は毎日仕事帰りに煙草の赤マルとブレンドSをセットで買っていく。いつものと言われれば笑顔で用意をし素早く会計を済ませる。レジの反対側へ誘導し、ブレンドを手渡すと「そういえば、」とおっちゃんはブレンドコーヒーの中に砂糖とミルクを入れながら話しかけてきた。
こういった常連との他愛ない会話にも慣れ、最近では楽しむようにもなってきたのだ。

『なんですか?』
「店長が言ってたんだけどな?最近かなりのイケメン君がよく来店するらしいよ。」
『あ、へー…』
「……」
『……ん?』
「ん?じゃなよー、舞ちゃんイケメンとか興味無いのか?」
『いやー、ほら、私、オタクだから二次元でお腹いっぱいというか、生身のイケメンに会ったら一歩引いちゃうという、、』
「もっったいないなー、舞ちゃん可愛いのに。」
『ははは、』

じゃあねー、と満足したのかコーヒー片手に帰るおっちゃんに「ありがとうございましたー!」と声をかけ特に話題に出たイケメン君の事は気にせず仕事に戻った。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -