09


昔から、厄介事は嫌いだった。
別にあいつの事は嫌いじゃないし、むしろ家族のように感じている。クソ生意気な弟くらい。
でも、周りはやっぱりそうは思わない。
幼なじみだってだけで陰湿な嫌がらせは多かった。まあ、こっちだってやられっぱなしの弱っちい奴じゃないから反撃もした。手だけは出さなかったが口は誰よりも出した。

だけど、更に陰湿さは増した。
人数が増える程密度は濃くなり、陰湿なものに加え、堂々と、やられるようになった。


流石に気付いたあいつは、離れようとした私を「嫌だ」と言い離さなかった。
離さなかったせいで、あいつは私を庇って、消えない傷が今でも残ってる。

優しすぎる。馬鹿だよ、本当に。
私もあいつも。









『雪?』
「え?」
『や、そろそろお店行かないとかなって。遼君待ってるかと。』
「そうだな!ごめんごめん」
ボーッとしていた雪に声を掛けると、慌てた様子で読んでいた漫画を仕舞い始めた。でもその鞄私のだから、慌て過ぎだから。
『雪さんの鞄は反対側でしょ。』
「ご、ごめん」
『………私はさ、』
立ち上がり、雪の頭に手を乗せポンポンと何回もリズム良く叩きながら独り言のように雪に言った。この子は真面目な事を面と向かって言われるの、凄く恥ずかしがるから。
『今隣に居る女の子のこと、知ってるようであまり、知らない。でもそれはお互いそうで。だからと言って無関心な訳でもない。私は、隣に居る意地っ張りで口も悪くて自分勝手な女の子が大好きよ。話したくなったら話せばいい。私も話したくなったら話す。そういう関係でいいんじゃん?長い時間かけてお互い知り合う方が色々あって面白いじゃん。』
よし、行こう。と、俯いて話を聞いていた意地っ張りで口も悪くて自分勝手な大好きな友人の手を引いて歩き出す。






過去に何があったかなんか知らない。
知らないし、言わないのなら聞かない。
でもさ、こうやって寄り添うくらいはしてもいいでしょ?
だって、大好きなんだから。



「舞のくせに生意気…」
『知ってる』
悪態吐きながらも小さくありがとうとお礼を言う親友の手を優しく繋ぎ直した。



待ち合わせのパスタ屋に行けば「手を繋いじゃって、仲良しだ」と言いながら、じゃあ俺もと雪の手を繋ぐ遼君。それに対して本当に嫌だった雪は私と位置を交換し「こっちと繋げ」と言うもんだから調子に乗るなとデコピンを一発御見舞した。
目が合えばいつものように笑顔が零れる。



(事情の知らない遼君はちんぷんかんぷん)



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