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能井となまえは昔から仲が良い。
歳が近いこともあり、能井はなまえの言うことをよく聞いた。二十歳程離れた煙の言うことなんかよりもよっぽどよく聞いた。

なまえは煙屋敷に住んでいたから、煙に会うかもしれないリスクがあることは嫌だったが、能井もよく煙屋敷を訪れていた。

そんなある日、煙が心をファミリーに入れた。
なまえは自分と年齢の近い者がまた増えたことが嬉しくて話したいと思ったが、過保護な煙がホール育ちだというその少年と話すことを許さず屋敷の中でなまえが心と会いそうな時間帯は必ず仕事を入れられた。


「オレは会ったよ?」
『えぇ!?能井ちゃん、もうあのコに会ったの!?どうやって!?』
「えー どうやっても何も、普通に。」
『ううう… 煙の奴…!』
「…そんなに心に会いてーの?」
『うん。会いたい』


なまえは基本何事にも無関心だ。なまえの両親が亡くなった後、自分が何処に住むかということさえ無関心で魔法使いの世界に住む場所が無いのならホールに行くとさえ行った程だ。それを見兼ねて煙がなまえを屋敷に招いたのだが。
それはさておき、能井は珍しく興味津々ななまえが面白くなかった。


「(今まではオレと遊ぶ時だけ楽しそうだったのに、今は心のことで頭がいっぱいだ…)」
『ちゃん…、能井ちゃん!』
「ん?」
『ずっと呼んでたのに、ぼーっとしてどうしたの?体調悪い?』


ぺたぺたと能井の額や頬を触り体調を気にする。能井はそんななまえの手のひらの温かさが好きだった。


「なあなまえ」


俯いて言おうか言うまいか悩んでる心のもやもやと葛藤する。そんなこと滅多にしない能井の違和感に気づいたなまえは近付いて優しく返事をした。


『なあに?』


覗き込んで自分だけを映すなまえの大きな瞳も能井は好きだった。


「心と会わせても、オレと今までみたいにずっと会って、遊んでくれる?」


それを聞くとなまえは嬉しそうに目を細め、にんまりと口角を上げた。


『当たり前でしょ!“心くん”に会ったとしても、これから能井ちゃんが悪魔になっても、私はず〜っと能井ちゃんが大好きよ!』
「オレも!なまえが大好きだぜ!」


ぎゅうぎゅうと抱きしめ合う二人は自分たちの抱く感情に名前を付けることも、
その感情が他とは違うということも幼さ故に、まだ知らない。




2020.09.15