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煉獄さんとの任務の後、煉獄さんが

「ここからはうちが近い!夕餉を取っていくと良い!」

と言ってくださったから、俺と善逸はお言葉に甘えることにした。ちなみに伊之助は別の任務で今日は一緒ではない。


「ただ、彼女は怒ると怖いからな!
それだけ覚えておいてくれ!」
「彼女?」
「俺の妻だ!」
「妻!!!!」


俺の後に善逸が叫んだ。あの煉獄さんが怖いというなんて、どんな人なんだ!?なんて思いながらも今は早く休みたかったので足を動かした。





***





邸宅の門構えには藤の暖簾がゆらりと掲げてあり、煉獄さんはここが我が家だ!と言いながら入っていった。


「帰ったぞー!なまえ〜!俺だぞー!」


煉獄さんが暖簾を潜りながら叫ぶ。先程までのきつい任務の後とは思えないくらい、元気よく、活気強く叫ぶ。
すると奥からぱたぱたと足早な音が聞こえてきた。


『おかえりなさい!今日はもう遅いから明日帰ってくるんだとばかり思ってて。お迎えが遅くなってごめんね!』


夜更けだというのに眠気等見せず迎え入れてくれたのは小柄な薄桃色の着物を着た若い女性。


「いや、夜分遅くなって帰ってきた俺たちが悪い!彼らに君の飯を食わせたくなって今日の内に帰ってきたんだ!」
『やだ、杏寿郎さんったら…!
皆さんおかえりなさい!任務お疲れ様です』


親しみやすい快活な笑顔を浮かべるこの人がなまえさんなんだろう。どうもと頭を下げると丁寧にお辞儀を返してくれた。


「竈門炭治郎です!お世話になります!」
「我妻善逸です!夜分遅くにすみません」
『ふふ、元気な方達。煉獄の妻のなまえです。我が家で良ろしければ、ごゆるりとおくつろぎ下さいね』


柔らかな笑みは少なからず任務の疲れを癒してくれた。


「腹が減った!飯にしよう!」


と靴を脱ぎ歩き出した煉獄さん。

と、その時、なまえさんの腕が煉獄さんの隊服の裾を掴み、「ぬ"っ」と蛙が潰れたような声が出た煉獄さんが後ろにつんのめった。俺よりも小柄な女性が、柱である煉獄さんをつんのめらせる力があるとは。


『飯にしよう、じゃないでしょ。
あなた自分がどれだけ泥、埃だらけか分かってるの?お湯を沸かしますから、お食事は後から。お風呂が先です。』
「俺は腹が減った!」
『杏、寿、郎、さ、ん…』


なまえさんの先程までの穏やかな笑みはどこへ…確かに笑みは浮かべているが、その奥には般若さえ感じられる。


「、そうだな!風呂に行こう!」
「そ、そうですね!行きましょう煉獄さん!」
「ははは!よもやよもや!」
『ふふ!美味しいご飯を用意しておきますからね!』


煉獄さんの奥方は、絶対に怒らせてはいけない。




2020.08.10