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最初に出会ったのは、旧友・カラ松に飲みに誘われたときだった。

カラ松は私を、女性というものはおしゃれなバーにでも誘わなければならないと思っていたようで中心街の高い店に誘おうとしていた。けれど彼がニートであることは知っていたから、そこらへんの屋台でもいいよと言うと、カラ松は本当におでんの屋台に私を連れていった。

そこに一松がいたのだ。

いや、正確には松野家のカラ松以外の六つ子が肩を並べて座っていたのである。カラ松以外と同じクラスになったことの無い私は、同じ顔の成人男性たちに改めて驚きというか、それを通り越して奇妙さを感じたが、


「あっれー!?カラ松彼女いたの!しかもブスじゃないんだねー!」


と笑う赤いパーカーの奴への


『違うよ。ただの友達』


という訂正が何よりも優先だった。

一杯目のビールを飲み、飲み進めて、熱燗に手を出し、五本目を空ける頃には、お酒の弱いカラ松はもう寝ていて、私はこの数時間で覚えた他の六つ子たちと絡んでいた。ちなみに緑のチョロ松、黄色の十四松ももう寝ている。


「なまえちゃん絶対ェカラ松はやめといたほうがいいって〜!俺にしときな〜!」


おそ松は私の肩を抱き、お猪口の酒を飲み干した。


『だぁかぁらぁ、カラ松とは友達だって言ってんでしょうがこのバカ!』


そして、
私も大分酔っていた。



「口悪ィななまえちゃん〜!」

「そうだよおそ松兄さぁん!なまえちゃんがカラ松兄さんみたいなイタイ奴、構うわけないじゃ〜ん!」

『よく言った!松野の末弟!』

「末弟言うなよ〜トド松だよオラァ〜」


ピンクのトド松は、もう落ちそうなのか、目をとろとろ眠たそうにしながら笑っていた。こいつはもう時間の問題だ。放っておこう。
私はそれより、紫の一松が気になっていた。何も話しかけて来ない割りに、鋭い眼光で私を見てくる。


『んだよ一松くん…あたしに何か文句でもあんのかよぉ』

「は…?」

「おっ!なまえちゃん、絡み酒!いいねぇ!」



煽るおそ松に私のテンションも高まる。



『一松ぅ、ずっとあたしのこと見てたけどなぁにぃ?』

「え、あ、いや…別に何も…」

『嘘つけぇ!何かあるんだから見てたんでしょうが!エェ!?』



顔を逸らそうとする一松に腹が立った私は、一松の頬を掴み、ひよこのように唇を尖らせ、困惑の表情を浮かべる一松を見下ろした。


『言ってごらんよ…あたしに何の用なわけ?一松くぅん』

「いや、だから…」

『はあ!?なに!?聞こえないんだけどぉ!』

「お、おいおいなまえちゃん、そのあたりにしてそろそろ…」

『クズニートは黙ってな!この…社会のカス、役立たずのゴミ虫が!』

「うっ…!む、胸が…っ!」


心臓を押さえて引き下がるおそ松を、トド松は「しっかりしてよ兄さん!」と支える。
目を一松の方へ戻すと、彼は



『…なぁに、その顔』



頬を染め、困惑というよりはとろけるように熱い視線を私に向けていた。



「それ…俺に言ってよ…」



私の指で頬を挟まれていてクチバシのように唇を尖らせる彼の口から出たのは、思いがけない言葉で、



『…嬉しいの、こんな罵られて』

「たまんないね。もっと言えよ…」

『指図しないでよ、クズニートのゴミカス野郎のくせして…この、社会の糞が!』



そう言い、顔にブッと唾をかけると、さすがにチビ太が



「お、おい!ヒートアップしすぎだぞれ」



と止めに入った。私に唾をかけられた一松も、さすがにキレるかと思ったが、高揚したように口角を上げ、



「最ッ高…!」



と言い、失神し、椅子から転げ落ちた。慌てて一松の安否をするおそ松とトド松とチビ太。
その時さすがの私も酔いが冷め、



『…ハッ!い、一松!?一松起きて!!』



自分の行動に背筋が冷える。同時に顔から火が出そうなほど恥ずかしくなり、顔が熱く、赤くなっていくのが分かった。私は一体なんてことを!!!
でも、その時見てしまったのだ。ジャージのズボンを履いた彼の股間が三角お屋根を作っていたことを。

私のあの言葉を聞いて勃起するなんて、素直に、コワッ!と思った。でも、言う度に満悦そうな顔をしていく一松を見て自分の気持ちも高揚していたのも確かであることに、気付いてしまったのだ。


私は、とんでもない化け物を呼び起こしてしまったかもしれない。



2016.03.16