×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -














朝、学校に行くと私の後ろの席に座る男の子と目が合った。




「髪、切ったんだ」




後ろの席の吉田くんに話し掛けられたのはこれが初めてだった。
黒い瞳が私に映っているのを見たのも、これが初めて。

突然のことに驚いて言葉が出ない私に吉田くんは「あれ、違った?」と首を傾げる。




『あ…、ううん。切った、よ』




スカートの丈を短くせずそのままで着ている私とは違い、ピアスが沢山開いた彼はこんなあざとい仕草も出来るんだ。

そもそも後ろの席の吉田くんが学校に来ていること自体あまり無いから、後ろの席が空席では無いこと自体が私にとっては珍しく思ってしまう。


それなのにこんな朝早い時間に吉田くんと会うなんて。

クラスにはまだ私と吉田くんしかいない。


悪魔を倒すバイトをして大金持ちだとか、年上の女の人にお金を貰って好き放題遊んでるだとか、吉田くんには色んな噂が飛び交っているけれど…




「なまえさんって何でいつもこんな早く来てるの」
『わ、私環境委員だから』
「環境委員って何するの」
『花壇の水やり、とか…』
「朝から水やりやってんの」
『う、うん。一学期はそれすれば他の仕事は無いから…』
「へえ」




吉田くんは私から何を聞き出したいんだろう。
ていうか何で吉田くんはこの時間にいるの!?

私は朝の一人の時間が結構好きだったりするのに、




「俺って何委員なんだろ」
『、え?』
「皆何かしら委員入ってるんでしょ?俺は何委員なんだろ」
『自分のことなのに、知らないの…?』
「うん。ほら、俺学校全然来ないから」
『た、確かに…』




確かにじゃないよ私!




『何で来ないの?』
「ん?」




口が滑った。


何聞いてるんだろう、

聞いたところで何も興味が無いはずなのに。





「なまえさんは学校楽しい?」
『…それなりに?』
「えぇ、疑問形?」




なんて少し笑いながら頬杖をついた吉田くんは、前に少し離れた所から見た時に感じた同い年のはずなのに年上のように見える雰囲気は無くて、ただの同級生に見える。




「なまえさんと話すの楽しい」
『あ…、そう?』
「うん」




長い前髪から少し見えた真っ黒な瞳。

真っ直ぐに見つめられる。




「…俺、環境委員だったらいいな」





吉田くん、何でそんなに私に構うの。





『とりあえず吉田くんは環境委員じゃないよ』
「…チッ」
『(舌打ちされた!)』
「(朝早く来ればとりあえずなまえさんに会えることは分かったから良いや)
俺、帰るね」
『えぇ…!?』
「またね」
『ま、また…』




本当に何しに来たの吉田くん!!!




『(そういえば、何で吉田くん私が髪切ったこと知ってたんだろう。)』
「(あ、髪切ってもっと可愛くなったねって言うの忘れた)」






2021.08.04
フリーリクエスト