ヴァニタスの孵化





 翌日九時、警察署大会議室。似たようなくたびれたスーツを着込んだ集団が、困惑をもって集まっていた。
 前方の大型ディスプレイに表示されている座席表の指示通りに席に向かうと、席には先客がいる。隣の席だろうに、なんでわざわざ僕の席に座っているんだか。
「やほやほ、志道君、お久しぶりだねぇ」
「お久しぶりです、宇喜多さん。隣にずれていただけますか? 」
 この会議室には似合わない快活な笑みを浮かべる女性は宇喜多 美花。笑顔と穏やかな口調が印象的で、組織内外問わず敵を作らない人だ。その上、超難関と呼ばれる資格を複数所持する凄腕だ。
 一度でも一緒に行動したら、彼女のことは忘れられなくなるだろう。そんな彼女が、席を陣取ってくるのだから、僕は気に入られているのだろう。
口先で、移動するのをごねながらすんなりと席を明け渡してくれる。憂鬱な顔をしているだろう僕に対する気遣いだ。そういう優しさを持っている人だと知っている。
 彼女と僕の席が隣ということは、そういうことなんだろう。

九時十五分。全員着席を確認後、会議が始まった。
ディスプレイ上部には「市民殺害事件 特別捜査本部」と掲げられている。他にも事件現場の状況写真や被害者の司法解剖結果が表示される。それらを元に捜査本部長、事件主任管などが順番に事件概要を述べていった。
 手元に配布された資料に追加情報を書き込んでいく。現場の散乱状況、遺体が入っていたコンテナの使用痕跡、死因について。初動捜査に関する報告は、昨日の二十三時まで書いていたのだから報告を聞かなくても内容は頭に入っていた。
 現場検証や死因についての報告が終わると会議室内にどよめきが走る。この楽土市は犯罪発生率自体が殊更低く、殺人事件は起きるはずがないと警察官ですら思っていたのだ。
 平和ボケ、という言葉が一番似合う。半年前の僕ならこの平和に慣れ親しんだ同僚たちに軽蔑の目を向けていただろう。今は、同僚の気持ちも分かるようになった。
とにかく、と捜査本部長がだした大声でざわめきは引いていく。
「この楽土市で、このような事件が発生するなど許し難い。早急に犯人を探し出し、逮捕せよ。この街の安全と正義のために全力を尽くせ! 」
 捜査員達の返答の声が幾重にも重なる。この街の安全と正義のために、全てのこの会議室の全員が掲げる、絶対の価値を脅かすものは早急に排除しなければならない。そんな、一体感が満ちていた。
 この熱狂の中で、隣の宇喜多さんは冷めた目で調査資料が表示されたタブレットを見つめていた。

「さて、私達は殺害現場にいた市民一人ひとりに聞き取りをするわけだけど、経験者の見解はいかがかしら? 」
 助手席からの声に少し視線を向けて、直ぐに前を見る。
「発見時、その場にいた人を聴取するのは通常の事かと。しいていうなら、衝動的に殺したというには殺し方に時間をかけすぎで、計画的に殺したにしてはあまりに確実性にかけます」
「そうね、私も同意見よ。まるで、『思い付いた方法で取り敢えず殺してみた』ようだわ」
 赤信号で車を止める。横を見れば宇喜多さんが食い入るように資料を読み直していた。そう、資料を読めば読む程に首をかしげてしまうのだ。

 1時間前
「えー、被害者の死因は窒息死です。コンテナボックス内にドライアイスと共に閉じ込められ、ドライアイスが気化し二酸化炭素濃度が上昇、酸欠になり死亡した可能性が高いでしょう。まずガムテープで拘束した被害者をコンテナボックスに入れ、次に多量のドライアイスを入れコンテナボックスを閉めたと考えられます。被害者2名共に皮膚に凍傷が見られました」
 鑑識の担当者はそう説明する。
「現場のパン屋は相当に荒されていたんだろう? もみ合ったりした形跡はなかったのか? 」
 昨日のパン屋の姿を思い出す。女将と少女の姿も一緒に。執拗に荒されて、踏みにじられた。それなのにどこか引っ掛かる。
「それが、被害者には凍傷の痕、火傷の痕しか確認されず、もみ合った時に出来るような傷は確認されませんでした。これらの事から、スタンガンで気絶させ、拘束したと考えております」
 会議室がまた騒がしくなった。それも当然だろう。もみ合っていないのなら、犯人はわざわざ二人を拘束し、コンテナボックスに閉じ込めた後に店内を荒らしたことになる。
 発見を遅らせるため? 店内が荒れていれば真っ先に通報される。何もしないで逃げた方が良い。
 荒れている店内に注意を向かせたかった? 遺体の発見を遅らせるなら愚策だ。金庫もレジスター内の金もとられた形跡はない。よって物盗りではない。
 スタンガンを使った事を隠したかった? 遺体を偽装したとしても鑑識や検視で大抵のことはすぐにばれる。それが分からないような人間か? 子ども? いや、不自然だ。
 そもそもスタンガンを使ったとはいえ2人の人間を気絶させ、拘束するのはかなり大変だ。一人に逃げられるリスクもあるし。気を失った人間を運ぶのは力仕事だ。成人女性でもできなくはないが、かなり難しい。女将は恰幅が良かったから、それを運べる者。となると、やはり男性。仮に男性だとして、わざわざ店内を荒らした理由が分からない。
 ......通報したかった? 店内を荒らすことの唯一の利点は通報されやすくなること。
犯人は自分で通報したかったのだろうか。確かに、殺した本人が通報できれば、自身が作った状況以外、第三者の踏み込みなどの不確定要素がなくなる。
 しかし、何のために?
 それに、ドライアイスで窒息死となると不確実だ。コンテナボックスの通気性は素人目にはすぐに判断がつかないだろうに。確実性で言うなら包丁でめった刺しにした方がいい。
 その場で思いついた方法で殺して、取り合えず現場を荒らしたようだ。衝動的にころしたのだろうか。なら、なおさら問題だ。そもそもドライアイスは素手では触れない、手袋を持って犯行に及んだか、常に寝袋を持ち歩いていたか。

 隣の席で、タブレットカバーが音を立てて閉じられた。
「2名の女性を難なく運べて、手袋を携帯していても不自然にならず、発見者として通報できる人物が候補に挙がるわね。そして、お誂え向きの人物が一名」
「自転車整備店経営の男性ですね」
 車を停めて、サイドブレーキを上げる。
 店先に止められた車を見て、青年が訝し気な顔をして出てきた。通報時、群衆の中にいた青年だった。

 宇喜多さんが事務的な説明を行い、タブレットに表示された同意書にサインと指先の静脈による認証を行った。
 これで、被疑者の青年が事件前1週間の詳細な行動が把握できる。
 宇喜多さんのみが出来る捜査、個人の行動記録(ログ)を全て確認できる「個人行動記録閲覧者資格」を行使した被疑者の行動把握だ。
 楽土市の犯罪率が低い理由の一つにこの「個人行動記録閲覧者資格」がある。
 そもそも楽土市では試験的に全ての住民に対してGPSの着用が義務付けられている。そのGPSで記録された行動記録がある限り、事件が発生しても直ぐに犯人が割り出せるのだ。
 当然、プライバシーの保護の観点から否定的意見も多い。それを緩和するのが、資格の設定だ。
 「個人行動記録閲覧者資格」を持つのは、現在、宇喜多さんだけだ。筆記試験や面接試験を含む多くの試験を通して唯一適合者として選ばれた。
 宇喜多さんは、青年の虹彩をスキャンし行動記録をダウンロードしている。何度か画面をタップし、データに不備がないか確認している。
「いやー、ハイテクですよね。この街は。例え疑われたとしてもすぐに疑いも晴れますし。まぁ、でも、何もしていないのに行動を知られるのは嫌なものですね」
 客商売だからか、慣れているのだろう笑顔を浮かべているが言葉は嫌味そのものだ。宇喜多さんはそれを聞きながら朗らかに笑って捜査協力の礼を述べている。
 現行犯逮捕以外の捜査の時にはほぼ必ず捜査に関わる宇喜多さんは多忙を極める。ストレスも多いだろうに、僕のようにならないか、それだけを心配している。


 警察署内通信室。薄暗い室内に、薄型モニターに画面が光る。モニターの前には、僕と宇喜多さん。画面の向こうには木下。
 昨日のような普段の浮ついた姿を知っているせいか、仕事中の眉間に少し皺のよった木下を見ていると何とも形容しがたい気持ちになる。なんというか、具合悪いか? と訊きたくなる。
『宇喜多さんに送っていただいたログを確認しましたけど、怪しい動きはないですね。証言通り店内には一歩も踏み入れていません。なんなら1週間パン屋内には入っていませんね』
「お店の前で立ち止まっていることもないかしら。そうね3分以上立ち止まっている記録とか」
『それもないですね。店の前を通る時に多少歩く速さが下がってますが、ショーウィンドウを見ていたと言われても違和感はありません。立ち止まってもいませんし』
「じゃあ、立ち話もしていないか。私怨があったとしても1週間以上前ってことね」
 自転車の青年の行動記録からは不審な点はなかった。パン屋と何か揉め事があったとしても1週間以上前ということになる。これ以上は行動記録からは探れないだろう。
 宇喜多さんと木下との会話を聞きながら、共有されたばかりの捜査会議後にまとめられた資料に目を通す。一か所、妙に引っかかる箇所がある。
「パン屋の店主さんと娘さんのログはどうかしら? 」
『そっちも事件当日に以外は妙なところはないですね。ログで分かったことと言えば、先にコンテナに詰められたのは娘さんだったことくらいです。それと先に気絶したのは女将さんの方ですね』
「そう判断した理由は? 」
『先に動きが止まったのは女将さんだったんです。で、娘さんが裏口側に走ったと思ったら急に止まって、歩く速さで厨房の方に移動。娘さんの動きが止まってから女将さんが移動を始めました。女将さんが気絶させられて、それを見た娘さんが逃げようとして捕まったってところでしょうね。きっと気絶させられているでしょうから、そっちでゲソ痕調べたら分かるんじゃないです? 』
「あー、木下。こっちでゲソ痕調査やってないんだ。ログで動きが確認できるから」
『マジかよ、ハイテクも困りものだな。ログだけだと引きずられたかどうかまでは分かんないからな』
 僕の言葉に、木下が背中をそらして上を見る。うん、この言葉遣いが僕の知っている木下だ。このやり取りを見て宇喜多さんが、ふふ、と笑う。
「木下君、すぐ解析してくれてありがとう。たぶん、これ以降も解析お願いすることになるかもしれないけどよろしくね」
『いえ、お役に立てたようなら良かったです。データ解析、バックアップは俺の仕事なので、何かあればすぐに連絡ください。あと志道、当分無理だと思うが、ちゃんとこっちの飲み会のこと忘れんなよ』
 通信を終え、二人そろって一息つく。どうしても情報共有には緊張が付きまとう。
「木下君、仕事も早いし、丁寧ね。ありがたいわ」
「気心も知れてるので、正直僕もやりやすいです。データ解析はアイツの得意分野なので、信頼できますよ」
 今回、現地での捜査は宇喜多さんと僕がペアになっているがログの解析などは木下が担当する。
 ログへのアクセスは個人行動記録閲覧者資格を持つ宇喜多さんにしかできないが、ログの解析は知識と解析ソフトがあれば一応誰でも可能だ。ただ、出力されたデータを分析する能力は必要で、そこは個人の力量だ。そして、木下はなんだかんだで仕事ができる。
今回も木下には被疑者のログだけが送られ、どんな人物か、性別、年齢など一切知らされないまま解析する。本人曰く、歩くスピードを割り出した時点で体格は粗方見当つくが、それを公言しないのも仕事の内だそうだ。
「うーん、もう13時かぁ。よし、志道君お昼食べよう! 」
 通信室の椅子から勢いをつけて立ち上がる。椅子はくるくると慣性にまかせて回る。
「良いですね。流石にお腹空きました。それと捜査資料について確認したことがあります、食べながらでも? 」
 椅子の背を掴んで机の前に戻す。いっそハイテクになるなら、何もないところから椅子とか机とか出てくれば良いのにと思う。実現には程遠いけれど。
「もう、仕事人間なんだから。私まだ捜査資料更新されたの見てないから軽く説明してくれると助かるわ」
 そう言いながら防音仕様の少し重たい扉を開ける。人のざわめきが戻ってくる。まだ眩しい日差しが射し込んでいる。


 お盆の上にはかき玉うどんと無料のお茶。パン以外の昼食は久々かもしれない。そのパンももう食べられないけれど。
「つまり、娘さんの方はコンテナ内で藻掻いた形跡があって、店主さんの方にはなかったってこと? 」
 向かいの席に宇喜多さんがお盆を置く。天ぷら定食とプリンだ。
「ええ、しかし拘束時にもみ合った形跡はないので、抵抗できない程度に電流を流して拘束したことになります。女将さんは気絶するレベルの電流だったのに」
「店主さんには後ろから近寄れたから首筋狙えたけど、娘さんは皮膚の薄い所狙えなかったとか? 」
「可能性はあります。娘さんも怖かったでしょうし、動きを止めて拘束できればそれで十分だったということでしょう。しかし、娘さんだけ苦しんで死亡するようにされたのは確かです。女将さんのように殺したいだけなら、拘束してから再度スタンガンを当てられたはずなので」
 うどんを啜る。そばにしようかと悩んだけれど、流石に朝と同じものを食べるのも気が引けた。
「私、若い子が事件に巻き込まれるの嫌なのよね」
 そういいながら、宇喜多さんも食べ始めた。
食べ終わるまでしばらく無言だった。ただ、お互いの仕事柄、食べ終わるのも早い。15分も経たない内に皿の上が空になる。そして、嬉しそうにプリンの蓋を開け、食べ始める。無料のお茶を啜る僕とは違い、食べることを楽しんでいて健康的だ。
「プリン、好きなんですか? 」
「うん、甘いものは全部好きよ。日頃はあんまり食べないけど。でもプリンは息子がすごく好きだったから」
 声があまりに柔らかくて驚いた。と同時に正直、お子さんがいたことにも驚いた。こんな仕事だ、呼び出しがかかれば休みなんてものは消えてなくなる。お子さんはどうしているのだろう。
「お子さんいたんですね」
「うん、5歳なのよ。本当に可愛いのよ。一緒にはこれなかったけど」
「じゃあ、ご実家とか旦那さんとかに任せてる感じですか? 」
「まぁ、そんな感じかな」
 そういって食べかけのプリンを見ている。
「本当に可愛いのよ。小さいおてて伸ばしてママ、ママって」
 思い出の中の息子さんを思い出しているのだろう。笑顔を浮かべながら、どこか寂しそうな顔をする。
 本当に大事にしていたのだろう。もしかしたらここへの赴任も本当は嫌だったのかもしれないと思うと、宇喜多さんが遠く離れた人という認識が少し弱くなる気がした。
「息子さん、なんてお名前……」
『緊急招集、緊急招集、宇喜多、志道両名は現場に急行せよ、繰り返す……』
 一瞬にして静まりかえる食堂、館内アナウンスに加えタブレットも鳴動を繰り返す。
食べてる途中なのにと不満を漏らす宇喜多さんもスプーンを咥えて立ち上がった。交番と違い、車のカギは総合事務室にある。
「宇喜多さん、僕先にいって車のカギ貰ってエンジンかけときます。プリンは車の中でたべてください」
「ありがとう、じゃあお盆下げておくね」


 タブレットに表示された現場に到着すると、既に鑑識の調査が始まっていた。規制線が引かれ、ブルーシートで囲われた場所がある。
 規制線の向こうには野次馬が身を乗り出している。この光景はどこでも変わらないらしい。スマホを取り出して撮影していないだけありがたいものだ。
 顔見知りの刑事と鑑識員に手を上げる。気付いた人から手を上げ返し、親指でブルーシートの方を指した。さっさと入って確認しろ、ということだろうか。
中に入り、鑑識員達に軽く挨拶したら、現場をざっと見渡す。状況は飛び降り自殺に似ているが、どうだろう。
 ブルーシートで覆われた遺体、飛び散った血痕。上を見上げる。赤いレンガ壁のビルから落ちたらこの位置だろうか? 自殺であれ、他殺であれ、あの高さであれば損傷も激しいだろう。
「仏さん、確認しますか? 」
 帽子を目深に被った鑑識員が抑揚のない声で訊いた。ちらりと宇喜多さんの方を見て、ブルーシートをめくる手を止める。
「ええ、お願いします。宇喜多さんも確認されますか? 」
「もちろん、ちゃんとお仕事はしないとね」
 鑑識員がそっとブルーシートをめくった。
 絶句した。隣の宇喜多さんもそうだ。
「飛び降りだけではこうはなりません」
 鑑識員がぼそりという。
 遺体は激しく損傷していた。ビルから落とされたせいでもあるが、それ以前に刃物でずたずたにされている。強い憎しみ、怨恨を前提として捜査するべきだろう。
 宇喜多さんは大丈夫だろうか、赴任前の部署などは聞いていないがここまでの損壊は殆どない。心配になって横を見れば、目を見開いて、驚愕の表情を隠せないでいる。
 気付いた鑑識員がブルーシートを戻す。その動作で、宇喜多さんは小さく息を吐いた。
「宇喜多さん、ちょっと外に出ましょう。僕でも見られたレベルではないので」
「ええ、ごめんなさいね。ありがとう」
 鑑識員は何も言わず、検死のために遺体を動かす準備を始めた。粛々と仕事を進める姿に彼もまた赴任前は同じ仕事をしていたのだろうとあたりを付けた。
 外に出て、空を見上げる。太陽は少し西に傾いて、影を伸ばす。
 宇喜多さんの顔色は少し回復しただろうか。慣れていないなら、今日の夕食は苦心するかもしれない。先に自販機にでもよって水なりお茶なり買ってきたら良かった。以前の、皆が皆、変に慣れてしまった職場ではないのだから。
 深呼吸を繰り返す音が聞こえる。その場で嘔吐しないだけ上出来だと、入職したばかりの僕の背を叩いた初老の先輩を思い出す。宇喜多さんはそんなやわな人ではないけれど。
 ふと、野次馬の方を見た。わらわらと人が立って、何事か何事かと覗き込もうとしている。
 そんな中で、黒髪の少年が立っている。中学生くらいだろうか。じっとブルーシートの方を見詰めている。
 少年と目があった。正しくは目が合ったようにみえた。そしたら、踵を返して大人達の間を縫うように立ち去った。周りの大人達は彼に気付いた様子も見せずに覗き込もうと背伸びを続ける。まるで最初から彼がいなかったようだ。
「志道君、どうしたの? 」
 声を掛けられて驚いた。回復したらしい宇喜多さんだ。野次馬の方を随分ぼんやりと見つめていたみたいだ。
「何か気になることでもあった? 」
 彼女の言葉に少年の事を言おうか悩んで、やめた。事件に関係することでもないのだ。
「いえ、何もありません。もう少し、現場を見てから帰りましょう」



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