00:56 刀を捨てて抱き合って


先日、田村由美先生の漫画『BASARA』を読み終わりました!
めちゃくちゃよかったです……
ラストから番外編までしっかりまとまってました……(ギャグ番外編はまた別ですが)

昨年、人にお借りして『7SEEDS』を読むまで、田村先生の漫画は避けていました。絵柄が苦手だったからです。
でも読んでみると無茶苦茶面白かったのです……!絵も平気になりました……7SEEDSは連載中の作品なので、今でも雑誌で読んでいます。
その流れで田村由美先生の超有名作品である本作も読み始めてみたわけですが、やはり冒頭からわくわくさせられました。ただ借りに行く手続きが面倒になってしばらく読むのをやめてしまっていたのですが、先日書店でふっと続きを手にとって読んでみたところ止まらなくなってしまいまして……ついに最後まで一気に読んでしまいました。

この物語は、主人公の少女・更紗が「運命の子供」と呼ばれた兄・タタラに成り代わり、男装して革命軍のリーダーとして戦うお話です。
父と兄を殺した「赤の王」を倒すために、少女であることを隠して戦う更紗の苦しみがよく描かれています。人を導くつらさ、殺すつらさに加えて女の子ならではの目線でのつらさや、とらわれた母との再会、15・16歳の少女にはあまりに過酷な展開が続きました……でも更紗は健気に頑張りました。
悩みながらもがきながら成長していく様と、天性の利発さや人のよさが素敵な女の子でした。
群像劇としてもすばらしく、タタラ軍の仲間たちや出会った人々の成長も共に描かれます。
話のもう一つの肝は、「タタラ」である更紗が「赤の王」である朱理とお互いの素性を知らずに惹かれあって愛し合うところです。
お互いがそれを知ってしまってからの苦悩もつらかったです……どうやって消化するのかドキドキしながら読んでいたのですが、ハッピーエンドでよかったです!
めちゃくちゃ泣きました!!

文明崩壊後の日本を舞台にしていて、日本史っぽい要素がいろいろ出てくるのですが、山陰山陽が砂漠化している世界なのでかなりエキゾチックな雰囲気をただよわせています。
でも日本史のネタや要素がすごく多いです……ふしぎ……!



登場人物の中では揚羽が一番好きです。
美しい!かっこいい!覚悟がすごい!!生い立ちが不幸!!
少女漫画を読むとたいがい主人公を深く愛しながらも主人公とくっつかない男を好きになるのですが、この作品でも例に漏れませんでした。
彼は、主人公の更紗を「運命の女」かもしれないと目して見守り慈しみ、時には檄を飛ばして、時には近くから時には遠くから守ってくれる美しい人です。
更紗を守るために身を張ってくれた時はせつなくなりました……最期も……
女装の踊り子もやるとっても綺麗な人なのですが、決して線は細くない。ごつくてめちゃくちゃ強いのですがよくボロボロにされていました。(そういうの好きだなつくづく)
揚羽の四道への愛憎(というかほぼ愛)も切ないです……
いい人なんだけど、奴隷だった揚羽をあくまで一段下に見ていた四道と、そんな四道と対等になりたかった揚羽……
四道の最期もその関係は変わらずじまいでした……
最終回後の番外編(過去編)も!つらすぎ!
アロいい女でしたね…
四道に「俺のものになれ」と言われた時の揚羽の妄想チューは本気でせつないです……四道はチューはしないし、ただ有能な部下として、友人として揚羽をほしいみたいなんですけど、そんなこと言っても結局一段下に見て一歩後ろを歩けってことはそれ所有するってことなんですよねー。
抱かれてめちゃくちゃに屈服させられたらもう何も考えずに四道のものになれるだろう、と心の中で笑った揚羽はやっぱり四道に焦がれているんですよ……いっそそうしてほしいと思っているんですよ……。ただそれは一番の望みではないけれど……
ほんとなんで四道は揚羽を抱かなかったんだ……単にノンケなんだろうけど……本編的にはそれでよかったんだからいいんだけど……抱かれてしまったら揚羽はそれはそれで多分一生対等になれなかっただろうし……(仕えることを是とする、プライドも捨てちゃう、ということなんだと思うので)
揚羽がどこかで子どもをこさえていて、その子が四道の息子の求道くんと対等な信頼関係を築いてくれる……くらいしてくれないと満足できないです……
つらい!
大好き!
風のように自由だけれど、人のために頑張るのが好きな人でした。

二番目に浅葱ちゃんが好きです!
浅葱ちゃん!かわいい!!
ひねくれものの浅葱ちゃん、実は自分が何者かわからず苦しんでいた浅葱ちゃん……最初はキライだと思っていたタタラや仲間たちを徐々に好きになっていって、自分を確立できた浅葱ちゃん……この子の成長が一番うれしかったです……
『摩利と新吾』の篝にすこし似ているなと思いました。篝は心の底では憧れていた明るく優しい新吾に好きだと言えず、自分の存在もうまく認められず死んでしまう子でした。そんなわけもあって、浅葱ちゃんがすっきりしてくれて本当にうれしかったです。
部下としてついてる四君子のひとり、群竹さんが本気で浅葱ちゃんを心配してついてきてくれるのもうれしい。おっとりした群竹さんかわいいです。

次に好きなのは熊野天狗党のリーダー・ひーちゃん!
那智との名コンビ!ベタベタの紀州弁!!クールな面差し!!みんなの言いにくい厳しいことを率先して言ってくれる優しさ!大好きです!
7SEEDSで一番好きな源五郎がよく似た顔をしているので、田村先生の描かれる顔でたぶん一番好きな顔立ちです……スッとした切れ長の黒い瞳……
最後の番外編のハヤトの話でも大事な役回りでうれしかったです。


だいたい主人公とくっつく男はあまり好きになれないのですが、この相手役・朱理は結構好きです。
最初は理想の高い若造にしか見えず「なんでこいつとくっつくんだよ」と思っていたのですが、都を追われてからの朱理はなかなかいい男に成長していったのでかなり高評価です。民主主義男になりましたね。
更紗はいい男に愛されるいい女だと……いい人間なんだと思います。
揚羽も浅葱ちゃんも更紗を愛していますし更紗もふたりのことを大好きなのですが、更紗が恋しているのは朱理に対してだけなのもよかったです。結局揚羽はお兄ちゃん的な仲間で浅葱ちゃんは弟っぽい仲間というかんじでした。変な風に女だとバレる逆ハーレム感もあまりなくて読みやすかったです。仲間たちに女だと告白するところは意外とアッサリしてて驚きました……

印象的なキャラクターはほかにもたくさんいますが、四道の妻・千手は特に印象的な人でした……最初は愛する四道を殺したタタラたちを憎んでいたのですが、歩み寄ってくるタタラにやがて心を許していく……
生む女と死んでいく者たちを描いているところも、たまらなく好みでした。Vガンかよ!!

情報通の瓦版屋・太郎ちゃんも大事なキャラクターだなと思いました。知識欲の塊みたいな人で好きだな!
揚羽の友人で……最期つらかったです……
沖縄の話とか芸術家の兄ちゃんの話もつらかったです……


アニメ版もひととおり(1クール)見ました。正直BGMが笑えてしまったりちょっと謎なところもありましたが、なかなかよかったです。
でもやっぱり全編アニメにしてほしいですね!1クールぶんだけなんてもったいない!最後朱理坊主のままですし!!
いまはできないすげえ豪華キャストだったので、いまならどんな感じかなと妄想しています。

今後も田村先生の作品をいろいろ読んでいきたいです!



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