た迷惑な兄弟

(クラスメイト視点)

キャアア、と男子校におおよそ似つかわしくない黄色い悲鳴があがる。いや、やっぱりちょっと黄土色だったかも。男子校だから仕方ない。かくいう自分も、声にならない悲鳴をあげて目の前の先輩を凝視しているくちだ。

「桂木さま・・・!」
「なんて麗しいお姿なのっ」
「・・・一晩でいいから抱いて欲しい、」
「押し倒してみてえっ・・・!」

なんか不穏な言葉も聞こえたけど、まあ何時もの事だから置いておく。全寮制男子校において同姓の恋人ができるのは最早当たり前。ひいては夜の営みも男同士なため、・・・まあ察して下さい。ああでも、桂木先輩のお姿を拝見できるなんて・・・! 生徒会書記、桂木陸さま。ぼくらの一つ上、二年生の先輩で、とてもとても人気のある人物。え? なんで二年生の桂木先輩が、この教室に来たのか? まあ、それはもちろん桂木先輩が弟の桂木稜くんに会いに来たからだけど。

「稜、」
「え、陸っ? どうしたの?」
「・・・今日、ひま?」

目をパチクリとさせて驚く稜くんに、桂木先輩はゆるゆると笑いかけて問う。ああ、あの笑顔だけで何人の生徒が倒れたことか・・・! 弟だからってわかってるけど、稜くんが羨ましくて仕方ない。皆が一度は思うことだろう。でも桂木先輩の溺愛っぷりを見てるから、稜くんに手を出す愚か者はいない。それに稜くんって性格良いから、少数だけどファンいるし。

「今日? うん、ヒマだよ。どうして?」
「・・・、家から、いっぱいお菓子、届いたから、」
「一緒に食べようって?」
「・・・ん、」

頬を緩めたまま頷く桂木先輩。ああ、身長が170を余裕で越えてる立派な男の人なのに、なんだろうあの可愛さ・・・! ほわほわと柔らかい空気を纏う桂木兄弟に、クラス中の目は釘付け。他クラスからもわざわざ覗きに来てる生徒がいっぱいいるくらいだ。

「陸の部屋?」
「・・・ん、・・・いや?」
「そんなことないよ! じゃあ放課後陸の部屋に行くね?」
「・・・いや、」
「え?」

するりと自然な動作で、稜くんの背中に腕を回す桂木先輩。そのまま驚く稜くんを抱き寄せて、桂木先輩の青い瞳がニッコリと笑った。

「迎えに、くる。・・・教室でまってて」

かぁ、と顔を赤くする稜くんは、遠目に見てもとっても可愛かった。ファン増えちゃうかな、とか思ったけど、それ以上に桂木先輩の満面の笑みが衝撃的過ぎて殆どの生徒が全滅していた。

・・・・それにしても。

「か、桂木ー? 授業始めたいんだが・・・」

甘い空気を垂れ流す二人に、先生が頼りなく呟く。

授業開始は何時になることやら。
ぼくは桂木先輩の姿を見れるだけで幸せだから、どうでもいいけど!




2010/03/10/

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