生徒会長を務める林原 伶(はやしばら れい)は、悲しそうに顔を俯ける勇希に優しく声をかけた。
最近転校してきた勇希は、近頃のうちではもっとも伶の関心を惹く存在である。

「どうした?勇希。なんかあったか?」
「伶・・・。」
「そんなに悲しい顔をしないでください、勇希。」
「・・・紫・・・。」

もっさりとした髪の毛のせいで顔は見えないけれど、たぶんきっとおそらく。悲しみに表情を染めている(だろう)勇希に、眉を顰めて言葉を連ねる副会長の柏木 紫(かしわぎ ゆかり)。

「誰かにヤなことでもされた?勇ちゃん、だいじょおぶ?」
「嫌なことされたのなら、おれたちに言え。」

きゅるん、と音でもつきそうな可愛らしさでもって小首をかしげる書記と、真剣な表情で勇希に顔を向ける会計。

生徒会の面々に囲まれて、勇希は俯けていた顔を上げる。

「実は・・・」

おずおずと語りだされた内容を要約すると、「転入してからこっち、同室者が部屋に戻ってこないのが心配だ」というもので。
悩み事を打ち明けてくれた勇希に喜んでいいのやら、その内容が他の誰かを心配するものということに憤ればいいのやら。
一様に悩みだした生徒会役員たちに、勇希は慌てたように腕をふる。

「き、きっと友達んとこに泊まってるんだよな!近いうちに部屋に帰ってくるよな!」
だからみんな、そんな心配するなよ!

と笑って勇希は声をあげる。がしかし。
ううん、と悩んでいたきゅるるん書記が、名案!と声をあげた。

「良いこと思いついたあ!放送で呼び出しちゃえばいいんじゃない?」
「放送?」
「そうそう、勇ちゃんをいつまでもそんな(どうでもいい)ことで悩ませてらんないよおっ!」

なにか含みがあった気がするが、それはさておき。
書記のセリフに、副会長が麗しい顔をぱっと輝かせる。
会計がなるほど、といった風に頷き。

「いいんじゃねえ?やってみるか」

と、会長が勇希の腰に腕を絡ませながら不適に笑った。
ここでの一番の実力者である会長が頷けばあとは簡単。
全員で連れ立ってぞろぞろと放送室へ向かうのみである。


放送室へ続く道すがら、風紀委員長やら村上やら新たなお供をひっかけつつ。
まあ、村上はお供じゃないが。

いつのまにか物々しい団体さまになった勇希たちは、意気揚々と放送室へ向かうのだった。





死神の足音。上
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