がらりと風紀委員室の扉を開けて閉める。
執務机の上に置かれた白いタワー。見間違いだと信じたい。

深呼吸して、再びゆっくりと扉を開く。


「…はあ…。」


白いタワー、もとい書類の山。
いつかこうなると思ってたけどね。
かといって覚悟してたわけでもない。
勝手に自滅しろ生徒会、とか思ってたのは少し甘かったようだ。

誰も居ない風紀委員室に入って、後ろ手に扉を閉める。
他の机の上は空なのに、ピンポイントでおれの机に書類積んだのは誰だ。

書類の山の上に置かれる、生徒会役員たちの印鑑。と書置き。
よろしく、と一言だけ書かれたそれをビリビリに破り捨てて、机の横に置かれたゴミ箱に捨てる。

なんでも、生徒会役員たちは転入生にかまけて仕事を疎かにしてるらしい。
あくまでも噂レベルの話だけれど、書類を前にすると信じざるを得ない。
プライドだけは人一倍高い生徒会役員たちが、仕事を放棄するなんて考え難いけど。
仕事の放棄をしなさそうな筆頭である、わが風紀委員長も仕事を放棄してるんだからありえない話でもないのか。


学校の風紀を取り締まる風紀委員は、腕っ節のたつマッチョが多い。
あくまでも委員会なので、クラスから一名風紀委員を選出しなければいけないのだが、なんの因果か学年主席というだけで風紀委員会から直々に名指しされてしまったのだ。
脳みそ筋肉だらけの風紀委員に、書類を捌く要員が欲しかったらしい。
なんて迷惑。
図書委員にでも入ってのんびりしようと思ってたのに。

と、まあそれは横に置いといて。

喧嘩なんて口喧嘩くらいしかしたことがないおれは、なんだかんだで書類捌く係りとして風紀委員会に在籍している。
つまり、おれがやらなければいけない仕事は、風紀の書類を片付ける仕事だけ。

なにが言いたいのかというと。

「だれが生徒会の書類なんてするか。」

ということである。


誰の入れ知恵か、はたまた悪知恵かは知らないけど。
風紀委員会は生徒会の持ち物でもなければ、生徒会の仕事を片付けるために存在しているわけではない。
こんな書類持ち込まれても迷惑なだけである。

風紀委員の仕事分だけとって、あとの書類は役員の印鑑ごと来客用のテーブルにどける。

改めて自分の机に座りなおして、色々な報告書に目を通した。


あー、風紀委員やめていいかな。
風紀委員の仕事だけっていっても、最近量が増えてるのだ。
暴れまわる親衛隊と転入生と生徒会たちと風紀委員たちのせいである。
あいつら傷害事件とか器物破損とかしすぎ。ふざけんな。

一日のうち一時間でも仕事が長いなんて耐えられない。
断じて、そう。断じて!雄介との時間が減るとかそんなわけじゃない!
いや、少しはそういう要素もあるけど、それだけが理由じゃなくて…。
おれはだれに言い訳してるんだ。

頭を横に振って考えを振り払う。
とりあえずいまは仕事を片付けよう。そう大した量でもないし。




一通り目を通し終わって、一息つく。
書類を見続けて酷使した目元を軽く揉みながら、ちらりと来客用の机に積まれた書類を見やる。

思ったよりも早く風紀の仕事は終わったし。

おもむろに立ち上がって、生徒会の書類を斜め読みする。

「はあ!?これ新歓の書類…生徒会からの通知が遅いと思ってたら、書類に目を通してすらいないわけ…?」

めくればめくるほど、放置したらダメだよー、と全力で主張している内容の書類ばっかり。
しかも提出期限が迫ってるどころか、切れているものもある。
風紀委員宛の白紙の書類もあるし。
これ提出遅れたら風紀の所為にされるじゃないか!

生徒会内部で処理するもの以外にも、各委員会へ提出する書類がざっくざく。


「…頭痛くなってきた…」

米神を指先でおさえて、目を閉じる。

今の時間は18時20分ちょっと過ぎ。
雄介との待ち合わせ時間は19時だから…少しくらいなら処理してやってもいい。
ただ各委員会宛の物だけだ。特に風紀宛のもの優先。
風紀委員の書類が滞ったら注意されるのはおれだからな。
あとは全部生徒会に突っ返す。

そうと決めれば後はさっさと書類を整理するだけだ。


白いタワーから必要な書類だけを抜き取って、たぶん必要になるだろう役員たちの印鑑を片手に執務机に戻る。


あと30分ちょっと、全部出来なかったらとりあえず持ち帰るか…。





疫病神な転校生。
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