穏やかな寝息をたてて眠る譲。
疲れが溜まっていたのだろう、目覚める様子の無い彼を、じぃっと見つめる陸。
ベッドの傍らに座り込んで、滅多に見ることの出来無い譲の寝顔を凝視する。
いつも陸より早く目覚め、陸より遅く寝る彼。
陸が眠れない日は、譲も傍らで一緒に起き続けてくれるから。
一緒に寝る頻度は高いのに、あまり見たことのない寝顔をとても貴重に感じて、陸は一心不乱に穴が開きそうなほど譲を見つめていた。
「ゆず、る」
そろそろと、譲が寝ているベッドの上に乗り上げて、体を跨ぐようにして上から譲を見下ろす。
譲の顔の横に両手をついてじいっと見つめても、譲は身じろき一つせずぐっすりと寝入っている。
よっぽど疲れているのだろう。
起きる気配のない彼を、このまま寝かせておきたいと思う。
けれど同時に、せっかくの休日なのに、なんて子供染みた思いもある。
暫く逡巡して、起こさないようにそっと、疲れの見える目元を指先で撫でる陸。指を離して、ちゅ、と小さく唇をおとした。
すやすやと眠り続ける譲の寝顔をもう一度だけみつめて、ゆっくりと彼の上から体をどかせる。
そのままベッドから降りて、寝室から出て行こうとした陸の腕が、不意に何者かにつかまれた。
そのまま勢いよく後方に引っ張られて、扉へ向かっていた陸はなんの心構えもなくベッドに背中からダイブする。
「っ、う、…え?」
「つれないな、陸」
「ゆ、ゆずる…?」
一瞬息の詰まった陸は、目を白黒させている間にぎゅ、と抱きしめられて後方を見上げる。
ゆったりとした色気たっぷりの笑みを浮かべて、陸を見つめる譲にぱちりぱちりと目を瞬かせて、首をかしげる。
「おき、てたの、か?」
「いや、さっきまで寝てた。」
さっきまで、ということはつまり。
「…おこし、たか…?」
しゅん、と眉を下げて申し訳なさそうにする陸。
かまわねえよ、と陸の頭を撫でた譲は、陸を抱きしめたままごろりとベッドに横になった。
「ねみぃ…」
「、…」
「一緒に寝るぞ、陸」
「……、ん…」
向かい合う形に抱きなおされて、譲の胸に額をくっつけてうなずく陸。
頭上で譲が欠伸をした気配がして、つられて欠伸をこぼす。
「かまってやれなくてわりい…」
「…譲といっしょ、だから、…かまわ、ない」
本心からの言葉。
ぎゅっと力をこめて抱き寄せられて、陸も無言で譲に擦り寄った。
「おやすみ」
どちらからともなく落とされた言葉は、すやすやと寝息だけが響く寝室にとけてきえた。
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まるりさま、リクエストありがとうございました!
大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした、よろしかったら受け取ってやってくださいませ!
110424/ミケ
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