峰高貴 | ナノ


「高貴・・・せんぱ、・・・ふあ」

舌足らずな口調で陸が高貴の名を呼ぶ。笑みを浮かべた高貴は、その大きなゴツゴツとしたてのひらで陸の首筋をゆるりと撫で上げる。それに擽ったそうに身を捩って、陸は小さく声を漏らす。


「ふうん? 可愛いな、陸」
「・・・、ん・・・」

まあるい形の目を細めて、笑う。爽やかなそれとは裏腹に、あやしい手つきで陸を触る。手に含まれた感情に気付かないのか、陸は猫のように、擽ったそうにしながらも高貴の手を気持ち良さそうに受け入れている。

青い瞳がやんわりと細まり、薄い唇が小さく笑みの形をつくる。陸の白い喉を、高貴の日に焼けた指が撫でた。

「陸、・・・」
「・・・こ、きせんぱ、い?」


首を触っていた手を離して、次は艶やかな黒髪の感触を楽しむように髪に手をもぐらせる。そのまま後頭部に手をまわして、ぐいと思いっきり陸を引き寄せた。

「っわ、・・・!」


身長の割りに細すぎる陸はその体型通り力が弱いため、あっさりと高貴の腕の中へ身体のバランスを崩してダイブする。慌てて高貴の胸に両手をついて身体を離そうとするも、それよりも先にぎゅう、と抱き締められてしまった。


「・・・、こう、き先輩っ」
「陸、・・・良い匂いすんな」
「わ、・・・っひゃ」
「・・・甘い・・・お菓子か?」

すん、と犬のように陸の耳裏に鼻をもぐらせて匂いを嗅ぐ高貴。

首筋にあたる高貴の息だとか、匂いを嗅がれたことだとか。

一度にいろいろなことが起こり、陸の身体が羞恥から徐々に赤く染まっていく。


「・・・っ、高貴先輩っ・・・!」

悲鳴のような声に、高貴が苦笑して身体を離す。
肌を真っ赤に染めて、薄っすらと涙を浮かせた瞳で高貴を睨む陸に爽やかな笑みを零す。

「悪い悪い。良い匂いだったから、ついな」

そう言って今度はゆっくり頭を撫でる。そうすれば陸は少しだけ困ったような顔をして、しかし心地良いてのひらの感触にうっとりと目を細めた。


ちょっとずつ、ちょっとずつ。

高貴はこっそり笑う。



初めは頭を撫でるところから。少しずつ近づいて、近づいて、最近やっと抱き締めてもそんなに抵抗しなくなってきたところなのだ。

明日はなにをして、陸との距離を縮めよう。


高貴は丸い目に肉食獣染みた色を浮かべて、陸に見えないように薄っすら笑みを浮かべた。




……………………


100525/ミケ


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -