赤崎啓 | ナノ


温室に設置されている、アンティーク調のベンチにゆったりと体を預ける二人。純白のそれに置かれた、陸の白い手が小さく動く。

「けい・・・」
「・・・? なんだ?」

一度だけ手を握り締め、そっと啓に手を伸ばす。

他人の瞳を、初めて美しいと感じた。翡翠色の目に手を伸ばして、頬に指を這わせる。

首を傾げて陸を見つめる翡翠。どこかの土地では、黄金以上に珍重されたという玉の色。陸は息を詰めて啓の瞳に見惚れる。
瞳に触れることはできないから、白い指先で目の周りをそっとなぞる。

「・・・陸、」
「ん、わっ」

不意に、その指先を啓の手が取る。ぐいと腕を引かれて、突然のことにあっけなくバランスを崩した陸はそのまま啓の腕の中に、ぽすんと軽い音を立てておさまった。

今度は逆に、啓のごつごつとした長い指が陸の頬をなぞる。指の動きにつられるようにして顔をあげれば、そっと唇がおとされた。色気を多量に含んだ、厚めの唇が陸のまぶたに寄せられる。

「・・・綺麗な、色だな」

目に吐息がかかる距離で、そっと啓が言葉を紡ぐ。そのままペロリと舐められて、陸の体が驚きに跳ねた。

「っ、け、けい・・・!」
「あまい・・・」
「あ、あま・・・っ!?」

顔を赤くさせてあたふたする陸に、くつりと喉で笑う。猫のように目を細めてくつくつ笑みを零す啓に、むっと陸が頬を染めたまま唇をすこし突き出す。

「・・・、陸」
「・・・・・・な、に?」

笑みを零したまま、秘め事を囁くように耳元に唇を近づける。耳に吐息がかかって擽ったい気持ちになりながら、陸は啓の言葉に耳を傾けた、ら。

「あいしてる」
「っ・・・!」


甘く甘く。艶のある低音が、笑みを完全に消し去って囁く。真剣なそれに、肩を揺らして陸は驚きに眼を瞬いた。

「陸は?」

ますます肌を赤く染めた陸の反応に満足したのか、笑みを戻して啓が意地悪く問う。


泣きそうなほど赤くなった陸は、言葉を発さずにぎゅうと啓の服を掴む。


その可愛らしい仕草に、啓は幸せそうに笑った。





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100519/ミケ


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