しあわせ企画 | ナノ


しあわせ企画。お相手:文化委員長




木野尊は闘っていた。それはもう熾烈な闘いを繰り広げていた。

相手はこの上なく強敵で、的確に尊の弱点をついてくるのだ。震えるてのひらで目元を覆う。
現在地は尊の自室。もっと詳しく言えば、自室に置かれている黒いソファの上。尊自身が気に入って、寮に備え付けられていたものをわざわざ取っ払って運び入れた品である。

普段ならリラックスできるこの空間で、緊張しきった己に失笑が漏れる。尊が闘っている相手は、尊の膝の上でごろんと寝転がる人物だった。・・・つまり、陸のことである。



ソファに腰掛ける尊の膝の上に、猫のように頭を預けて丸くなる陸。陸と闘っているというより、尊の中の理性と本能が闘っているといった方が正しいかもしれない。




事の始まりは、陸が紅茶を零したところからであった。

普段邪魔ばっかりしてくる譲や稜が、二人揃って用事がはいり。一人で中庭へ向かっていた陸をこれ幸いとお菓子で釣ったのが約二時間前。誰にも邪魔されないようにと招いた自室で、陸のために買い込んだお菓子を出しつつ紅茶を淹れた。そこまではよかった。

しかし、陸が見事に紅茶を零してしまったのだ。どうやら猫舌らしく、熱さに驚いて取り落としてしまったらしい。普段は譲や稜が適温の紅茶をくれるらしく、それを聞いて複雑な気分になったのは秘密だ。

というわけで、紅茶が染みにならないうちに制服を洗濯機に放り込み。盛大に零したために胸元をびしょぬれにしてしまったので、そのまま陸にシャワーを浴びさせ。もちろん着替えなんて尊のものしかないわけで。上下の着替えを貸したはいいが、サイズが違いすぎてなんだか可愛い姿になってしまい。挙句、歩き難いと呟いてズボンを脱ぎ捨てた陸。いや、シャツが大きすぎてちゃんと下まで隠れてるけど。シャツの裾からすんなりと伸びる白い脚や、肩からずり下がる服を指先で持ち上げる動作なんて、・・・もう。


と、悶々としたのが約一時間前。尊の葛藤なんてそっちのけでお菓子を食べまくった陸は、ほどよい満腹感にうとうとし始め、なんとそのまま尊の膝の上に頭を落として寝息をたて始めたのだ。

困った。いや、嬉しいけど。それ以上に困った。膝枕を拒否すればよかったなんて後悔するが、上目で「・・・だめ、?みこ・・・せんぱい」なんて言われたら頷くしかない。




膝の上ですやすやと穏やかな寝息をたてる陸。白い頬に伸びる長い睫。


「・・・ん、」
「っ・・・」

薄い唇から漏れる声。ああ、なんだか妙な気分になる。シャツからのぞく白い太腿と、黒いソファのコントラストなんて悩殺モノである。第二ボタンまで開けられた胸元からのぞく鎖骨。
陸が動くたびに、髪の毛から香るシャンプーの匂い。当たり前だが、尊とおんなじ匂いのそれに。


「・・・、みこ、・・・せんぱ」
「っ、!」


唐突に呼ばれた名前に、体が強張る。陸の顔に伸ばしかけた己の手に驚く。

自分はなにをしようとしてた?



押し殺せなかった動揺、膝が大きく揺れたのだろう。陸が目を開く。ぼんやりと青い瞳を瞬かせ、その目が不意に尊を捕らえる。息を呑んで引っ込めようとした手を、ぎゅうと握られた。


みこせんぱい、みことせんぱい。


ふにゃり、寝起きの柔らかな空気で、陸が笑う。

「・・・す、き・・・です」



ざっと頬に昇った熱。ちゅ、と小さく指先に口付けなんてされてみろ。




理性だとか、今まで悶々と考えていた全てを捨て去る。
ああもう。


「あいしてる、陸。・・・愛してる」



そんなに幸せそうに笑わないでくれ。都合のいい勘違いをしてしまうだろう?



444444hit Thanks!!


……………………
補足すると、二人は恋人じゃないです。両想いなんだけど、陸も尊も相手は自分のことを後輩先輩としてスキだと思ってる、という勘違い。こういう小さなすれ違いの話が大好きです。←

お粗末さまでした!みなさまのおかげで444444hit通り越して何時の間にやら500000hitですね!アンケートにもたくさんのご協力ありがとうございました!^^


↓結果↓

合計:1073票

354 文化委員長
172 体育委員長
163 美化委員長
148 会長
118 三年不良
54 会計
22 腐男子
18 爽やかバスケットマン
9 王道君
6 副会長
5 補佐
4 一年不良






100506/ミケ


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