8 | ナノ




ふに、とした柔らかな頬。もみじのようにちいさなてのひら。
くりっとしたまあるい目を瞬かせて、体に対してまだまだ大きな頭をこてんと傾かせる。

片や、日本人にありがちな、しかしどこか普通よりも濃い黒の瞳をした、将来美丈夫になるだろうことが容易に想像できる美少年。まだ小学校に入学していないことを考えたら美幼児というべきか。
そして片や、宝石のようにきらきらと光る青い瞳をした、幾分性別不詳ではあるが女児にしては凛とした面立ちの美幼児。

平均を遥かに上回る美貌を持つ幼子ふたり、手を繋いで揃って首を傾げる姿は眼福この上ない。



「おつかい?」

黒い瞳の少年が不思議そうに呟く。となりで青い瞳の少年も、疑問符を浮かべて首をかしげたままである。
そんな二人に、緩む頬をそのままにそうよ、と頷くエプロンを着た女性。幼子、・・・陸と譲が通う幼稚園の先生であるその女性は、にっこりと微笑む。

なんとこの幼稚園では、園児を二人一組にさせておつかいをさせる、という取り組みをしているのだ。もちろん先生方三人体制で後をつけるのだが、まあとにかく。

今日おつかいにチャレンジする二人組みに、陸と譲が選ばれたというわけで。


「お店の人には言ってあるから、クッキーとあめだまを買ってきてくれるかな?」

有無を言わせぬ笑顔に見送られ、お財布を首からさげた二人は仲良く手を繋いで出発した。のが約一時間前。






「あああ、陸くーん、譲くーん、そっちは反対よう・・・っ」
「あっちはご近所でも有名な強面の犬がいる道よ・・・!」
「ふたりとも、引き返すのよー・・・っ、あっ、陸くんが犬に気付いた!」

こそこそと塀の影から囁きあう先生方。どこか慌てたようなむしろ楽しそうな空気で、二人に届かない音量でアドバイスを送る。

三人の目線の先ではちょうど、怖い顔をした犬に驚いた陸が譲にしがみついたころである。陸に突然抱きつかれて驚くも、すぐに犬に気付いた譲は園児とは思えないほど落ち着き払っている。
だいじょうぶ、舌足らずなのにどこか頼れる声色で言い陸の頭を撫でる譲。

「あの犬わたしも怖い」
「譲くん男前すぎるわ・・・っ」
「にしても陸くん可愛いわねえ」

譲に頭を撫でられて、固まった体を動かす陸。ホントウに?首を傾げる陸に、譲は笑い返す。陸のことはおれがまもってやるよ。陸に向けられた言葉なのに胸を押さえる先生三人。無駄に男前な譲(六歳)。そして譲の言葉に、陸がほわりと微笑んだ。滅多に見ることのできない笑顔に、きゅん、と三人分胸の高鳴る音が聞こえた(気がした)。







「せんせー、ただいま」
「・・・・・・」
「りくも、ほら」
「・・・、ただい、ま・・・せんせ」


なにこの可愛い生物。せっかく二人が買ってきてくれたクッキーを砕きそうになったなんて内緒である。



こうして着々と、先生方の心のアルバムに二人の姿が刻み付けられていくわけである。ちゃんと写真も撮っていたので、京夜や譲の親の手にでもわたるのだろう。そして忘れたころに掘り返されるに一票。とてもとても恥ずかしい気持ちになるか、懐かしく思うかは謎であるが、とにかく。



「あら、ふたりとも疲れちゃったのかしら」

すやすやと、穏やかな寝息をたてて眠る今の二人には遠い話であることは間違いない。


はじめてのおつかい


……………………
文さま、リクエストありがとうございました!
なんかいろいろすいませ・・・!(スライディング土下座)
しょたってむずかしい・・・←
素敵なリクだっただけに悔しい・・・!精進します・・・っ!

100507/ミケ


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