「陸ちゃん」

にこっと笑って茜が陸に声をかける。ちょうど茜の目の前を通り過ぎようとしていた陸は、かけられた声に反応して立ち止まった。きょとんと首をかしげて茜を見つめる青い瞳に、にこにこと笑う茜の顔が映る。

「 ? 」
「ちょっとこっち来て、陸ちゃん」
「…?」
「もうちょっと! ほら、もう少し近付いて」
「……?」

とてて、と恐る恐る茜に近付く陸。ちょいちょいと手で陸を招き寄せる茜は依然満面の笑みを浮かべたままである。


手を少し伸ばしたら、陸の頬にすぐ届きそうなほどの至近距離。ますます首を傾げる陸の二の腕をがしりとつかんで、笑顔を浮かべたまま茜は陸を引っ張った。


ちゅ

「っ!? …っ、? …!?」

首を傾げていた状態で思い切り腕を引っ張られ、茜の方に身体が傾いた瞬間。茜の唇が陸の頬に押し付けられる。可愛らしいリップ音とともに離れていった唇を見送って、茜に腕を掴まれたまま目を瞠る陸。ぱくぱくと口を開閉させて、驚きの表情で茜を見つめる。

「ごちそーさまあ」

ぺろりと紅い舌で唇を舐め、にこりと茜が笑う。驚きに目を瞠っていただけの陸の頬が、すこしずつ赤く色づいていく。それに茜は気分よく微笑み、陸の腕をつかんでいたてのひらを開く。

そのまま茜はひらひらと手を振って、頬を染める陸に投げキスを送って去っていった。その後姿を見送って、陸が足元から地面にふにゃりと崩れ落ちる。


熱い頬を両手で覆って、羞恥から染まる頬を必死に隠した。


右頬に口付け

 
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