「陸、ちょうど良い所に。少しいいか?」
「、尊、せんぱい」

教室から生徒会室へ移動していた陸を、ちょうど教室の窓から顔を出した尊が呼び止める。ん? と振り返った陸は尊の姿を視界におさめると、首をかしげつつ足の方向を変えて尊のもとへ向かった。教室の中にいる尊は、廊下に面する窓に片腕を預けて陸を待つ。

「陸、手をだせ」

首をかしげたまま尊の前にたった陸に、薄く笑みを浮かべる。告げられた言葉にぱっと陸の顔が輝いた。尊にこう言われたときは大抵甘味を貰えるからである。期待に目を輝かせておずおずと手を差し出した陸の左手を、自然な動作で掴む尊。

そのまますい、と陸の手を持ち上げて、薬指に口付けを落とした。

「う、え…!?」

びくりと肩を跳ね上げて驚く陸をよそに、尊は陸の指にバードキスをいくつも落としていく。

形の良い桜色の爪に唇を触れさせたまま、驚きに震える陸をみすえる。ぴたりとあった視線に、陸の青色の瞳がゆれた。

「み、こと、せん…ぱい」

ふ、と微かな吐息と共に囁かれた名前。ふるりと睫毛を震わせた陸を見て、唇に笑みを刻んで尊は指先から顔を離した。逃げようとするてのひらをつかまえたまま、ポケットから取り出した飴玉をころりと乗せる。

「またな、陸」
「え、…あ、…? せんぱ、」

いつもの様に陸の髪の毛に指を通して、くしゃりと頭を撫でる尊に陸が困惑したようにぱちぱちと目を瞬かせる。それにひどく楽しそうな笑みを向けて、尊が口を開いた。

「ご馳走さま、陸」
「っ、」

かあ、と瞬時に首筋を赤くさせた陸。尊からもらった飴玉を左手で握りしめたまま、恥ずかしさの余り踵を返した。陸の背を追いかけるように、尊の微かな笑い声が廊下に響いた。

(ダレあれ、尊先輩ってあんなキャラだったっけ…!?)
わたわたと走り去っていく陸がそう思ったかは謎である。


薬指に口付け

 
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