(1/28)ついろぐ・豪風夕



病室の一室。小さなブラウン管テレビに映し出された光景は、目も疑うほどの衝撃的な少年サッカー試合だったけれど、目が覚めて初めて見た兄の真剣試合に固唾を飲んで見守った。間もなく叫ばれた審判の勝利の声に、傍で見守っていた父もホッとした表情だ。その優しい視線につられて、ようやく肩の力が抜けた。固まっていた身体に大きなあたたかい手が乗る。確か兄の試合を見に行く前に、気をつけて行くんだぞと優しく声を掛けてくれたような。今朝のやり取りが脳裏を遮ったところで、病室の扉が勢いよく開いた。

「夕香っ!」

息を切らせ、やって来たのは先ほどまで見ていた兄の姿で。かっこいい背中に、同じく中継に映っていた青い髪の人も居て。目線を合わせて、こんにちはと頭を下げた人は、風丸お兄ちゃんだった。黒い瞳に薄い膜を張った兄ーーおにいちゃんを、風丸お兄ちゃんと二人で抱き締める。肩を震わせ、涙する兄に囁く声はとても優しい。

「目が覚めて、本当に良かったな」

私には、二人のヒーローが居るんだと、その時気づいた。





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◆君のためのヒーロー
(ヒーロー=愛して守ってくれる人、の解釈で無印ゲーム版設定で豪風夕)

お題お借りしました。
https://shindanmaker.com/590587


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