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同期の“女の子”が気になる




最近の私は何処かおかしい。けど体調が悪いとかでは無い。とある人物を目で追ってしまい、姿が見えないと探してしまう。まるで恋する乙女のようだが、そんなことは有り得ない。

「あ?なにガンつけてんだよ」

その相手は私と同じく高専に通う同期であり、寮の部屋は隣同士、そして同じく女の子である。そう。女の子なのだ。つまり、恋愛感情では無い。

「つーか、さっさと漫画取りに来い」
『あ、真希の部屋に置いたままだった』
「忘れんな」
『ごめんごめん』

任務終わりの真希と居合わせ、流れるまま寮への道を並んで歩く。夕日に伸ばされた二つの影を見て、胸の辺りがざわついたような気がしたが、きっと勘違いだ。だって私達は同期で戦友で、友人なんだから。

「おい、聞いてんのか」
『……え、え?なに?』
「だからァ、次の任務の話」
『あ、うん、ごめん』

知らない間に呪いでもかけられてしまったんだろうか。ここ最近、気付くと真希の胸辺りを見てしまっている気がする。しかも、その時に思うのは、何とも馬鹿らしい事に“触りたい”なんて低俗な想い。胸なら私にだってあるし、欲求不満なら自分でどうにかすればいいのに、どうしても真希が気になってしまう。

「いい加減にしろよ」
『いっ、痛い!痛いよ真希!』
「お前が話を聞いてないからだろ」

頬を摘まれ、痛みのせいで涙が浮かぶ。舌打ちを零して先を行ってしまった彼女の背中を眺め、ジンジンと熱を持つ頬に手を当て摩る。本当に自分はどうしてしまったんだろう。




∵∵∵

『真希〜、居る〜?』

漫画を取りに行こうと、薄っぺらい作りをした寮の扉を鳴らし部屋主に声をかけて承諾を貰ってからドアノブへ手をかけて捻る。中を覗くと首元にタオルをかけた真希が顔を出し、雑に髪を拭いて口を開く。

「おー。そこに纏めてあるから」
『しっ、失礼しました!』
「は?」

思わず扉を閉め、瞬きを繰り返す。こんな奇行に走ったのには、ちゃんとした理由がある。真希が薄着だったのだ。それはもう薄すぎると言っても過言ではないほど、無防備だった。ショートパンツに、上はキャミソール一枚のみ。そんなの、襲ってくださいと言っているようなものじゃないか。

「何やってんだよ」
『ぎゃあ!そんな格好で外出ちゃ駄目だよ!』
「外って、寮の廊下だろうが」

ポタリと髪から雫が滴り、露になっている胸元へと落ちるのを無意識に目で追ってしまい、慌てて視線を真希の顔へと移す。いつもと違って眼鏡が無く、瞳が宝石のようにキラキラ輝き、呆気に取られていると、真希が怪訝そうな表情でこちらを睨んだ。

「何やってんだよ。早く入れ」
『う、うん…』

ドギマギしながら入ると、格好から分かるようにお風呂上がりで、部屋が良い香りに包まれている。普通の事なのに、変に心臓が早いのはどうしてだろう。

『そ、そうだ、漫画…』

漫画を取りに来た事を思い出し、靴を脱ごうと踵を踏むが、それより先に影が差し、反射的に顔を上げる。すると真希の顔がすぐ側にある事に気付き、後退るが背中に扉の硬い感触を感じ、冷や汗が伝う。

『ま、真希…?どうしたの?』
「最近ずっと私の事見てるよな」
『そ、そうかな!?そんな事ないんじゃない!?』

裏返ってしまった声のみっともなさと言ったら、目も当てられない。既に近いのに、更に距離が詰められたせいで胸元に柔らかい感触が走り、体が石のように動かせなくなる。顔だって、キスが出来てしまいそうなほど近い。

「触りてぇなら触れば」
『…え、』

目を細めて煽るような笑みを浮かべた真希の毛先から水滴が落ちて、私の頬を濡らす。自分の喉が鳴った音で我に返り、動きかけていた右手を元の位置へと戻して視線を逸らす。でも、ちょっとくらいなら…。

「触ってもいいけど、責任は取れよ」
『せ、責任…?』

挑発的に首を傾げ彼女は悪戯に微笑むと、空中で彷徨っていた私の右手を取り、胸の前へと移動させる。というか、なんで私は真希の胸を触ろうとしてるんだ。思春期の中学男子じゃあるまいし。

「人の胸に触るんだから、責任取るのは当たり前だろ」
『そ、それって、真希と、付き合えるってこと…?』
「なに。私と付き合いてぇの?」

そう問われ、自分が吐き出した言葉の意味を理解する。あの言い方じゃ、私が彼女を好きみたいじゃないか。私達は女性同士で、友達のはずなのに、こんな気持ちになるなんて、おかしい。そう頭では思っても、気付いた時には勝手に音を紡いでいた。

『つ、付き合い、たい…』
「ふーん。私が好きなのか」
『好き…、大好き…』

聞くに絶えないような甘ったるい声が、自分から出ているなんて信じられない。けれど真希から視線が逸らせなくて、心臓の音と彼女の零す音吐だけが頭の中に反響する。

「やっと認めたな」

ニヤリと笑った姿に胸が高鳴り、言葉にするには難しい感覚が体の中に駆け巡る。真希の瞼が閉じられて、段々と距離が縮まり、死んじゃうんじゃないかと錯覚するほど心臓の音が大きくなる。ゆっくり重なった唇が離れ、徐に目を開けると、僅かに色付いた真希の頬を見て、言い訳出来ないくらい好きだと、降参するように両手を上げた姿に、彼女はまた唇を寄せた。


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