※9巻の後を捏造してみた ※新羅さんの怪我はフェイドアウト ちくしょう…、どうしてこうなった… 思い描いていた通り、今日もとても良い一日だったのに。 麻の袋は少し息苦しかった。恐らくはそのせいだけど。 酸素が妙に足りない状態が続いたし、まあ、ある程度の緊張も解けたわけで。 「…はぁっ、…っ、」 原因不明の呼吸困難に見舞われていた。 どうせちょっと休んでいればすぐに治まるだろうけど、こういう時にはどうしてもあいつのことしか思い浮かばなくて、困らせたくてしょうがなくて。 迷わず携帯に手が伸びる。 しばらくのコールの末、やっとつながる音がする。 「なあに、臨也、くだらないことだったら切るよ?」 「ちょっと、困ってて…っさあ、…助け、に、来てくれ、ない?」 「……なんか面倒くさそうだね」 新羅は人間というものにに興味がない。いや、あのデュラハン以外のものすべてに興味がない。 俺の言葉は届かない。そんなこととっくの昔から分かりきっているのに、何度だってこうして試してみてしまうのは何故だろう。 (いい加減、一ミリでもいいから俺の方を向かないか) 答えはやっぱり分かりきってて、それでもやめられない俺はマゾなんだろうか。 「今忙しいから他を当たってくれないかな」 「そういう、なよ」 こういう時は決まって最後の切り札で。 「友達は大切なんだろ?」 「……わかったよ」 ほら、こうすれば一発なのだ。 こういうところが、本当に、大嫌いだ。 新羅なんて、消えてしまえ! 結局どんな状況で何を喚こうと、こいつにはあの首無しの言葉しか耳に入らないのだから。 「シズ、ちゃん?」 呆気にとられた顔。やっぱりだ。こいつが呼んだのは俺ではなかったんだろ。新羅からの連絡であった時点で、疑うべきだったのだ。万が一、なんてうまい話は、やっぱり万に一なのだから、起こるわけがなかった。 「大丈夫か」 「たいじょーぶ、ごめんね、なんか騒がせたみたいでさ」 すぐに諦めたような顔でたしなめられる。そう、俺はこんな風に月並みなことしか言えないわけで。 相手にもされていない相手に執着し続けるなんて我ながら、あきらめの悪いことだ。 医者に見せた方がいいのか。いや新羅が俺によこしたってことは問題ないってことだろうか。いやいや、こういうことに関しては、新羅には前科が数えきれないほどあるからな。全く信用ならない 新羅がこいつを心配するわけがないのだ。そして、どうやら臨也はそういうところが気に入っていると見える。本当に訳の分からない連中だ。 このまま、俺の家に連れて帰って休ませようか。それとも近場のどこかに入った方がいいのだろうか。細いなあ、相変わらず。飯食ってんのか。何かうまいもんでも食わせようか。とびっきり甘やかして、そうしたら、何かが変わるだろうか。 止めどなく浮かぶ甘い妄想を討払う。 こいつが呼んだのは俺じゃない。それがどうしようもない現実だった。 「おら、行くぞ」 有無を言わさず担ぎ上げる。 「や、ちょっと待ってよ、どこ、行くの」 「新羅の家に決まってんだろ」 「な、んで!やだよ、そんなの」 「嘘つくんじゃねえよ!」 分かるんだ、お前のこことはずっと見てるからな。分かるんだ、だって、俺はお前のことが好きなんだから。 心はずっと自分の隣にいるわけだから、嘘をつくのはしんどいんだ。 _______ 三つ巴にもならない 自分が片思いを書く日が来るとは夢にも思わなかった…! |