金曜日の夕飯は一緒にというのが最近の俺たちの常だった。
外で食うこともあれば、お互いの家でのこともある。
ぴんぽーん、チャイムに呼ばれてドアを開ければ鼻の頭を赤くした臨也が寒そうにそこにいた。

「おじゃましまーす」
















「シズちゃん今日誕生日でしょ」

「…ああ、そっか」

「何、忘れてたの?」

ふわふわと笑われる。無自覚に笑ってるときの顔だ。いつもこうやって笑ってたらいいのに。

本当に忘れていただけなのだけど誕生日という言葉につられて記憶が、いろいろ蘇ってきた。小さい頃の記憶は大抵がぼんやりしているから、そんなにはっきりしたものではないけど、懐かしい。自分の記憶が懐かしいなんてすごく変な感じだけど、それくらい遠い。


「俺せっかくケーキ焼いてきて来てあげたのに」

「え?」

「シズちゃん甘いの好きじゃん、いちごの、嫌い?」

「いや、だいすきだけど」

「大好きなの、そりゃ良かった」

今度は盛大に笑われてしまった。しまった、俺、大好きって、それはさすがに無いだろ。

「じゃあご飯のあとに食べよう」

なんか、久しぶりだなあ、こういうの。
小さいころは母親がつくってくれるケーキで、家族に祝ってもらっていた。ふとそんなことも思い出せた。
新羅やトムさんがおめでとうを言ってもらった年もあった。そんなこともちゃんとあったのだ。





「シズちゃん」

「ん?」

「ぼんやりしてるよ」

「え、わりぃ」

「しょうがないなあ」


「誕生日だから、特別ね?」

肩に手をかけられたかと思うと、そこに体重がかけられて、つまりそこを支点にこちらに接近してきて、口を食べられる。え?



「何やってんだお前…」

「シズちゃんはさあ、もっと甘い反応とか出来ないわけ?」

言葉とは裏腹にまんざらでもない顔をしている。

「このひねくれ者」

「どっちが」

他愛のない会話が、好きだ。
こんなにも穏やかな時間過ごす日々が来るなんて、あの頃は全く想像できなかった。
昔の俺に教えてやりたい。まだまだこれからなんだ、生まれてきて良かったって思える日が来るんだって。





____

しずちゃんお誕生日おめでとう!ということで、迷った挙句、大人二人にまったりしてもらおうと思ったら変な方向へ…



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