※来神時代 あ、やばい。 昼休み、薬飲みわすれた。 なんとなく体がだるくて目眩がすると思ったら、そのせいか。 とはいっても、もう今日の授業は終わった。放課後にわざわざ屋上に来るやつもそう居ないだろうし、まあ普通にしているぶんには何ら問題ないし、良いんだけど。ただひとつだけ困るのは、そうそう、 「臨也あああああ!」 これです。 まじかよ、この人どんだけ俺センサーついてんの? わざわざ屋上まで来なくても良くない? 「てめぇ今日はこんなところに居やがったのか、よし殺す」 「えっ意味不明だよ!」 あ、本当に困るなあ。立ち上がったら余計にくらくらしてきた。うー、なんてタイミングの悪い男だ。ひとまずナイフ出したらその瞬間襲ってきそうだしね。 うーん、どうしようか。 「シズちゃん…、ひとまず今日は休戦しない?」 「あ?するわけねえだろ、馬鹿かお前」 ですよねー。いま襲われてない時点でもうほぼ奇跡だ。ナイフが見えないから本能的にストップしてんのかな。そしたら、こんなのはどうかな。 「こーさぁん、こーさぁん」 「てめっふざけてんのかああ!」 あれ、なんか逆なでしちゃったよ。まあそりゃそうか、ぷぷ、って笑えないよ俺。 あー、にしても薬ってすごいんだなあ。科学技術万歳ー。でもそんなにすごいなら飲み忘れ防止機能ぐらいつけるべきだよねえ。ああ、本当にきもちわるい。 「シズちゃ…」 「え?」 ちょっともう限界、その場に座り込む。ああ、やっぱり座るとちょっと楽だ。良かった。 「おい…、」 シズちゃんがこっちくる、けど戦意はすっかり抜け落ちたらしい。ふー、命拾いはしたみたい。 「てめえ具合悪いならそう言えよ!」 「言っても聞かないくせに…。」 「あ?…じゃねえ、何だよ本当に。よいしょ。」 よいしょ?よいしょってなんか俺浮いてないか?え? 「は、離せ!」 「うるせえ黙れ。」 何だこれは。いわゆるお姫様だっこだ。 無理無理これ!思いの外恥ずかしい! しかもこいつドアを開けるってことは中に入ろうとしてるよね?え、無理なんですけど! 「下ろせ!」 「こら、暴れんな。」 ジタバタしてみてもびくともしない。この怪力男め。 「普通におかしいだろ。恥ずかしいし!」 「てめえは死んだふりでもしとけ。」 「はあ?」 「そしたら何も問題ねえから。」 そんな訳ないだろ!と叫びたかったが、生憎元気の限界、と同時に一般生徒の声が聞こえてくる。ほぼ反射的に言われた通りにしてみた。 うわ、平和島さんだ また誰が狩りとってるよ! こえーよ 近づくなよお前 なるほど。 君たち丸聞こえだよー。 道が開いてゆく。これはすんなり行けそうだ。 シズちゃんはむすっとした顔で周りを威圧しまくりながら一言も喋らずに黙々と歩く。 ちょっとしんみりしてしまうなんてのは秘密だ。シズちゃんはこんなに優しいのにね、まあ俺だけが知ってれば十分なんだけど。 「おら」 降ろされた先は保健室のソファだった。 「あれ、静雄…に臨也?」 「新羅か。じゃあ。」 そう言ってシズちゃんは出ていこうとする。 「待って待って、付き添いがいる場合は、はい、この紙の記入が仕事だよ。臨也は検温ね。」 「えー、面倒くさいー。熱なんてないし、いいからちょっとベッド貸してよ。」 「ダメダメ、君の場合どうせ熱なさすぎだろ?」 ちっ、何でバレてんだこの変態闇医者もどきが。 「ほら静雄もさっさと書いて。」 なんで俺が、なんて言いつつシズちゃんは渋々書き始めてくれた。 入室時刻、15:53。クラス、ああ覚えててくれたんだ。番号は?と聞かれたので答える。名前、折原臨也なんて、シズちゃんの長い指が正しく鉛筆をもって案外きれいな字で俺の名前を書く。ちょっとドキドキする。症状?と小首を傾げるので何か言われる前に目眩とかにしておいてとてきとうに答えておく。 「はいどうも。」 新羅はシズちゃんから紙を奪い取り、折よく鳴った俺の体温計を抜き取ってその数値を、うわっとか失礼なことを言いながら、奪った紙に書きこんだ。 「はいじゃあ後はお好きにどうぞ。」 無責任だなあ。まあいいけど。 シズちゃんは大したことないよって言ってるのにずっと心配顔で頭をなでてくれる。 「薬飲み忘れただけだし、」 「もうすこししたら飲んでもいいって、夜の分。」 「薬飲んだらすぐ良くなるよ。」 「よくある感じだし、」 「酷いときより全然ましだよ。」 どんな言葉もシズちゃんには届かないみたい。 聞いてる?ってちょっと不機嫌に言ったら、お前が的外れすぎなんだと苦笑されてしまった。 ふいにシズちゃんが顔を近づけてくる。 「痛いの痛いの飛んでけ」 こめかみに柔らかくキスされて囁かれた。え?状況に全くついてけない。何だそれ。別にどこも痛くないし!気持ち悪くてぐらぐらしてダルいだけだから、そんなことされたって何にも良くならないよ?いやそもそも痛いの飛んでけって幾つだよ俺、そんなの効かないよ!やばい、ぞわぞわする、恥ずかしい。 しかもこんなことをしておきながら当の本人は何ら恥ずかしがるそぶりもない。思わずじっと見ていたら何?ってふわっと微笑んできた。この天然タラシめ、ああもう堪んない! こちらから抱きついて今度はしっかり唇へキスをしてもらった。 ---------- 静雄さん頭大丈夫かな(^ω^)? わたしもびっくりした あ、新羅くんは保健委員です ちなみにそれはタラシじゃなくて萌えだと思うよ臨也くん! いつかとの比較じゃなくて今を心配するシズちゃんでした |