※同居パロ




伝えたくない言葉があります



蝉の声といえばこれだった。
真夏の強い日差しや異常な熱よりも、冷房の温度とベッドから動けないだるい体。

からんと音をたてて氷が泳ぐ。
意識を失う前に入れてもらったコップは相当に結露していた。まわりがびちゃびちゃだ。

レースのカーテンがゆらゆらとして少し傾き始めた日差しをさえぎっていた。

ゆっくりと体を起こす。だるい。


ばっと見回してもシズちゃんは見当たらない。
きっと仕事に行ったんだろう。

仕方ないのは分かるけど、むかつくなあ。後でまた嫌がらせでもしてやろう。



リビングへと繋がる戸は開け放たれていた。シズちゃんは俺が狭くて閉じ込められてるみたいな所が嫌いなのを知っていた。


 白い?


その扉から押し寄せる強烈な色に意識が勝手に持っていかれる。気づけばベッドから離れその先をのぞきこんでいた。


開けっ放しにしてあるカーテンから遠慮無く侵入してくる広い光がリビング中に満ちている。シズちゃんがどうしてもって言うから、俺は黒がよかったのに、しょうがなく買ってあげた真っ白なソファがその光を反射して、眩しさは一層になる。
誰も居ない静かな部屋がただただ白い。
 しろい…

思わず足が止まった。

 どうすれば良いんだっけ、

何も考えられない、のに息が急に苦しくなる。

 シズちゃん…

何でだろう。意味もなく立ち尽くす。


 シズちゃん、シズちゃんっ、


抱きしめて欲しい。何でも良いから大丈夫だって言って欲しい。


ガラス越しの蝉の声は明瞭なのに死んでいるみたいで、頭がぐらぐらした。



怖くなって戸を閉める。
耐えられない、こんなの。



手をついていた棚には相変わらず結露したままのコップと、置いた覚えの無い俺の携帯があって、それには走り書きの汚い字で、目が覚めたら連絡しろと書いた付箋がくっついてた。


シズちゃんは優しい。
心配性で気を使う。


でもそれはシズちゃんだからだ。

俺にだからじゃない。

シズちゃんは優しい。


どうしようもない違いだ。俺はシズちゃんだからなのに。


それでもその優しさを手放せない。
それが悲しくったってそれでも俺は延々シズちゃんにすがりついてる。


幸せなくせに、悲しいのを止めることができない。

  俺も大概馬鹿だ。



携帯に手を伸ばした。


「シズちゃん、起きたよ、」

「大丈夫、だいぶ元気になったからさ」

「仕事頑張ってね、」


「そうだよ、待ってるから」

そう、ここが君と僕の家なのだから。言い訳はそれで充分だ。


涙は届かないように、


「ほら、仕事にもどりな、じゃあね」

好きだよ、シズちゃん


どうか俺を愛して下さい


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相変わらずひねくれ臨也がじめじめ…
もちろん静雄さんは臨也くんが大好きです!臨也は幸せを感じると自信がなくて卑屈になるタイプだったら可愛いな、とか



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