※個別指導パロで先生×生徒
(元ネタは6月17日の日記です)



「しっかり言ってやって下さいね、平和島先生」

いや、そんな。そんなこと言われても。

とは言えない。クビになるのはごめんだ。


「ではお願いしますよ」


お願いされても、困る。

折原臨也はサボりの常習犯だった。



俺のバイト先であるここは、補習をメインにした小さな個別指導塾だった。教室は小さいとはいえ、大手のチェーン店なのでマニュアル指導しかしない。教師は全員、俺のような、特に頭が良いわけでもない大学生ばかりだった。時給の良さから食い付くような学生ばかり。

折原は俺が担当についた生徒のひとりだ。数学を教えている、が、なぜこの塾に通っているのか疑問なほど、頭の回転が早く、実際に勉強も良くできる。ただ、重要な公式や手法を全くと言っていいほど知らなかったりする。しかしそれさえ教えれば解けてしまうのだ。しかも教えると言っても、一度説明すれば大抵は理解する。
教える側からすれば楽な生徒だった。


加えて折原はサボりの常習犯だった。学校の授業もきっと、そんな具合で、こんなことになっているのでは、と俺は勝手に推測している。

まあ、いいのだ、サボろうとこちらには手当が入る。 それなら、折原について俺がどうこう言う筋合いも意義もない。口煩い室長の目眩ましになる程度に何か言っておけば良いだろう。


「折原、また遅刻か」
「来たんだからいいじゃん、せんせーだって貰えるお金変わらないんだから得したね」

なんでお前がそんなこと知ってるんだ。

「お前なあ…、次からは気を付けろよ」
「はいはい、うるさいなあ」

うるさいなあってお前…、
駄目だ俺、キレるな俺。

「…宿題はどうだった?」
「別に」

気にするな俺!

「じゃあ丸つけるな」

中学生のくせに綺麗な字だな。
相変わらず良くできている。全問正解だ。

「ん、良くできてるな」
「あっそう」

こういう態度以外は本当に良くできたやつなのにな。

「じゃあこのプリント解いて」

一応解けと言えば黙々と解き始める。その辺は質の悪い小学生よりはましだな。
ゆるゆるとペンが紙を走る。こいつはやる気があるときと無い時の落差がはんぱない、とか思っていたんだけど、あれ、いま気付いたけど、こいつ、

「もしかして具合悪いのか?」

「…はあ?」

「いや、顔色悪いような…、」

「気のせいじゃないの?」

「いや、でも」
「うるさい、こっちくんな」

「折原、具合悪いなら無理すんなよ」

「うるさいな!お前には関係ない」


そう意識すると確かに具合が悪そうだ、けど、いつも通りのような、とか思案していたら、折原はいきなり力が抜けたように机に腕を付いた。

「大丈夫か!?おい、」

「うるさ、いっ、頭痛いから黙って、て」

「わ、悪い」

しんどそうに目を瞑りながら何かを払うようにゆるく頭を振る様に、たじろぐ。
心臓がどくりと一つなった。

人が弱った様を見るのは苦手だ。






「体調悪いなら休めよ」
「休むと家に電話入るから面倒なの。大体さぼるとごちゃごちゃうるさいのはそっちじゃん」
「ちゃんと連絡入れたら何も言わねえよ」
「具合悪いんですーって?」
「…ああ」
「死んでもごめんだね」

ふとよみがえる。

その感覚は、きっと同じでは無いにしろ近いものなんじゃないだろうか。

心配をされている時のあの妙な不快感とか、無駄に時間が過ぎてゆく焦燥感だとか。

「…てきとうなこと言って悪かったな」

「え?」

「俺プリントコピーしてくるから」

「は?」


どうせ俺がここにいても状況はどうにも変わらないだろう。
ゆっくりたっぷり時間をかけて15分、コピー室から戻ると、先ほどまでの強情はどうしたのか、折原は机に突っ伏していた。

起こさないように気をつけながら横に座る。まだ成長途中の華奢な体つきに思わず溜め息してしまう。

(壊れそうなものは嫌いだ。)

気をつけたにも関わらず、折原はゆっくりと起き上がりそっぽを向いてしまった。



「どうしても具合悪い時はここに来て寝てればいいだろ」

「…それ教師の言うセリフ?」

「うっせ、俺はただの学生だし、お前教えるのに80分もいらねえじゃん」



「はあ、なんか馬鹿らしくなってきちゃった」





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こんな感じですかね…?
そういえば先生×生徒は二回目ですね。今度は学校とかで生徒×虚弱教師とかも書きたいな!



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