※幼少期


お昼下がりの病院の中庭は穏やかなひかりに包まれていて、そこではいくつかの人々が思い思いに過ごします。

きれいだね
ざあと横へ風がとおりぬけ桜がほろほろと途切れ途切れに流れてゆきます。
その向こう側にうつくしい少年が座っていました。
桜の木のふもとのベンチに木へ背を向けてじっと座る少年はまるで桜の精のように現実味ない空気を醸して微笑んでいました。

ふたりを分かつように流れてゆく花びらのひとつを、座ったままの少年がつかもうと手をのばします。うすももいろを絡めようとうごめく白磁の指々はそのコントラストが眩くとても尊くみえました。

君は誰?
…ひみつ

少年は名前を告げることが出来ませんでした。自分の名を聞けば、このうつくしい少年も恐怖に顔を歪め逃げて行ってしまうとおもえてなりませんでした。

ひみつか。じゃあ僕もひみつにしよう。
へんなやつ
…よくいわれる

うつくしい少年がひどく悲しそうに笑ってそんなことを言うので少年は慌ててしまいました。
それまで少年は暴力以外で人を傷つける方法があることを知りませんでした。自分には決して悪意など無かったのにそれがちょっとも伝わらないのがもどかしくて仕様がありません。

ごめん
べつにいいよ。それよりここに座らない?
少年はさっきのことなど何もなかったかのようにやわらかに笑いながら自身の隣をぽんぽんと叩きました。

導かれるように少年は少年の隣へと腰をおろしました。

ほら

その呼び声につられるように、少年と同じように首を上へ向けるとただ青い空から雨のようにふる桜につつまれてゆきました。ほんとうにきれいだと思うのにそれが口からこぼれることは決してありませでした。となりに人がいることは想像よりもずっと温かく少年はうれしいと同時にとても不安になしました。
この少年は本当に人間なのか、いったいどんな人間なのか、そんなことばかりが頭を巡りました。

お前はどうしてここにいるんだ?
少年は思いつくままに問いかけます。

あのね咳がいっぱいでてとまらなくなっちゃったから。でももう大丈夫。君はいっぱい怪我をしてるけど、大丈夫?
これは、俺のせいだから、大丈夫。
君のせい?ちがうな。強いて言うなら神様のせいだよ。

何も知らないくせになんでそんなこと言えるんだよ!
なんでもさ。君の苦しいのも俺の苦しいのも俺がこんなに眉目秀麗なのもぜんぶ神様のせい。

こいつ頭おかしい!

何で神様はみんなにべつべつのものをあたえるのかなあ

さみしそうな少年のつぶやきに少年ははっとしました。まったくもってそのとおりだと、どうしようもない気持ちになりました。
ただひとつわかるのは、自分たちにはどうすることも出来ないということだけでした。
いいこともわるいことも人とちがうことはかなしいね。

まだそのちがいにひかれあうよろこびを知らない少年たちはただ悲しげにお互いのそんざいを呼応させてゆきました。

そろそろ戻らなきゃ
いくらかの時間が過ぎたころ小さく咳をしはじめた少年が立ち上がりながら告げました

さようなら。

((またどこかで))

重なる声は空気を震わせることなく二人の心にだけ共鳴してゆきました。

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変な話になりましたごめんなさい
相変わらずのみんなキャラ崩壊(^ω^)
シズちゃんは体弱くはないだろうが強くだってなかっただろうに。





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